「リスクヘッジに対する考え方が知りたい」
「リスクを取る際に気をつけるべきことは何?」
「中小企業はリスクとどう向き合えばいいか?」
というあなたに、今回は
中小企業や小さな会社における「リスクヘッジの考え方」「リスクの取り方」
について解説します。
リスクヘッジとは、起こりうるリスクを予測して、リスクに対応できる体制を整えることを言います。
ここでひとつ、素朴な疑問が浮かび上がります。
「そもそも、起こりうるリスクを予測することはできるのか?」
ということです。
仮にリスクを予測できたとして、
それがいつどのようなタイミングで起こるのか?
リスクに対する備えにどれくらいの時間と労力を費やせばいいのか?
考えれば考えるほど、分からなくなりますよね。
とりわけ、中小企業や小さな会社は本業に忙しく、それ以外の時間を最小限に抑えたいとお考えでしょうから、リスクヘッジに多くの時間とお金を費やすことはできません。
では、不確定要素が多い「リスク」と、どのように向き合うべきか?
早速見ていきましょう。
リスクヘッジの考え方
中小企業や小さな会社は、積極的にリスクを回避すべきか?
それとも、リスクに備えることなく、何事にも果敢にチャレンジすべきか?
ここでは、そんな中小企業や小さな会社における「リスクヘッジの考え方」について、3つのポイントをご紹介いたします。
中小企業のリスクヘッジの考え方 3つのポイント
- 完全にリスクを回避することは、極めて困難であると心得る
- リスクを最小限に抑えようとする場合は、コストを計算する
- まずはリスクを取ることで得られる「リターン」を勘案する
リスクヘッジに対する考え方は、経営者の考え方や価値観によって大きく左右されるものですから、簡単に変えることは難しいかもしれませんが、
「なるほど、こういう考え方もあるのか…」
という視点でお読みいただき、参考にできる部分があれば取り入れていただければ幸いです。
それではひとつずつ詳しく見ていきましょう。
リスクを回避することは困難と心得る
中小企業のリスクヘッジの考え方、ひとつ目のポイントは、
「リスクを回避することは困難と心得る」です。
預言者や占い師であっても、未来の出来事を正確に言い当てることはできません。
「一寸先は闇」とはよく言ったもので、私たちは予測不可能な世の中を生きています。
会社が利益を求めて何かしらの活動を続ける限り、様々な問題が次から次に起こるのは当然であり、リスクを避けようと思っても避けられるものではありません。
「リスクを避ける」という表現を噛み砕くと、
「起こりうるリスクを想定し、それが起こるであろう方向には進まない」
という表現になるでしょうか。
確かに起こりうるリスクをある程度は予測することはできるかもしれませんが、先ほども申し上げたように未来を予測することは誰にもできません。
リスクを避けようと進んだ先に想定外の問題が発生したり、とにかく現状維持を貫いてじっとしていたとしても、動かないことによる問題(リスク)が発生します。
そう考えると、経営戦略やビジネス戦略においては、リスクを避けようと考えを巡らすこと自体が時間の浪費であり、ナンセンスと言えるでしょう。
リスクを抑えるためのコストは最小限に
中小企業のリスクヘッジの考え方、2つ目のポイントは、
「リスクを抑えるためのコストを計算する」です。
「備えあれば憂いなし」という言葉があるように、予想されるリスクに備えておくことは決して悪いことではありませんが、その場合はリスクを抑えるために費やす時間と労力、コストなどを考えた上で、取り組む必要があります。
医療保険を例にとってご説明しましょう。
一般的な医療保険は手術や入院すると保険料が支払われます。このタイプの保険に加入した場合、仮に月額の保険料を3000円とすれば、年間で36000円の保険料を支払う計算になります。
貯蓄型の保険は別として、掛け捨ての保険は基本的に支払った保険料が返ってくる事はありませんから、手術や入院することがなければ、保険料として支払った36000円は1年間無事に過ごせた「安心料」として消えていくことになります。
問題はこの「安心料」が(自分にとって)高いのか?安いのか?ということです。
日本人の死因の上位を占めるがん(悪性新生物)をはじめ、急性心筋梗塞や脳卒中などの三大疾病に関しては、手術や入院費用も高額になるため、専用の保険に加入しておくと安心ですが、それ以外の病気で手術や入院を伴うケースはそれほど多くありません。
そう考えると、収入が多くお金に余裕のある方は別として、手術や入院する可能性が低いにもかかわらず、万が一のリスクを抑えるために毎月3000円のコストを費やす行為が、果たしていいのか悪いのか…少々疑問に感じるところです。
会社員であれば社会保険に加入していますし、自営業の方も基本的には国民健康保険に加入していますから、病気や怪我をしても治療費を全額自己負担する必要はありません。
大怪我をして手術することや入院することがあったとしても、1年のうちに何度も手術や入院を繰り返す可能性は極めて低いと言えるでしょう。
上記のことから、個人的には医療保険に入るつもりで毎月3000円を貯金や投資に回して、心配であれば三代疾病の医療保険のみ加入するという形でいいのではないか?と思ってしまいます。
普段から健康的な生活習慣を心がけていれば、手術や入院のリスクは下がりますし、仮に数年経ってから手術や入院することがあっても、毎年36000円ずつ医療保険の代わりに貯蓄していたお金を手術費や入院費に充てれば、場合によってはお釣りが帰ってくるかもしれません。
いろんな考え方があるので一概には言えませんが、毎月数千円の(掛け捨て型の)保険料を支払い続けるのは、長い目で見るとリスクに見合わない…そう思うのは私だけでしょうか。
リスクを最小限に抑える努力はすべきですが、リスクを抑えるためのコストを見極めて、
「起こりうるリスクに見合うものかどうか?」
はしっかり検討しておく必要があるでしょう。
上記のことから、ビジネス活動を行う上で、リスクを最小限に抑える場合は、できるだけコストをかけず「ほどほど」に備えることをオススメいたします。
リスクを取ることによるリターンを勘案
中小企業のリスクヘッジの考え方、3つ目のポイントは、
「リスクを取ることで得られるリターンを勘案する」です。
自社の現状をできるだけ正確に把握した上で、許容できるリスクの範囲を明確に定め、リスクを取ることで得られるリターンと比較、勘案します。
そして、得られるものが大きいと判断した場合は、あえてリスクがある方を選ぶ。
この手法の良いところは、リスクを避けようとしたり、リスクを抑えようとすることに一切の時間と労力を使うことなく、それらの時間と労力を全て「リターンを獲得する活動」に使えるところです。
新商品の開発や新たな人材の採用を例に解説しましょう。
商品開発は常に失敗するリスクと隣り合わせですし、人材採用も同様に、採用された人が実際に会社で働いてみるまで、どんな人かはわかりません。
いずれも多くの時間と労力が必要であり、少なからずコストを費やすことになる反面、その結果が保証されているわけではありませんから、リスクを伴う行為と言えます。
商品開発にチャレンジすることなく既存の商品を売り続けると、上記のリスクは回避できます。
人材採用に関していうと、人手が足りない場合、社員ではなく期間限定のアルバイトやパート、契約社員や派遣社員を雇うことで、会社とのミスマッチが生じても人件費を抑えたり、あらかじめ決められた期間で契約を終了することができますから、リスクを回避、あるいはリスクを抑えることが可能です。
では商品開発や人材採用におけるリターンはどのようなものがあるか?
パラダイムシフトといえば言い過ぎかもしれませんが、まずは見方を変えることから始めなくてはなりません。
「パラダイムシフト」とは、当然のことと考えられていた認識や思想、考え方や価値観などが劇的に変化することを言います。
つまり商品開発においては売り上げや利益が、人材採用においては採用された人の能力やスキル、会社への適応力や貢献度が重要であると考えられていますが、その他にも商品開発や人材採用を行うメリットはないか?という見方をしてみるのです。
考えた末、商品開発はそれを担当する社員にとって、絶好の成長機会だと気が付いたとしましょう。
商品を開発する過程において創造力や主体性が養われますし、デザインやマーケティングに関する知識や考え方も身に付く他、他部署との連携やメンバー間の意見調整を行う中でコミュニケーション能力も磨かれます。
採用活動に関しても、正社員を採用するとなると「会社が求める人物像」「この会社で活躍できる人材」についてあらためて考える機会になりますし、採用した後の新人研修を見直すきっかけにもなります。
パラダイムシフトを行って「見方を変える」ことで、上記のような隠れたメリット、つまり「リターン」に気づくことができれば、リスクを承知の上で「チームを作って商品開発する」ことも、「正社員の採用活動を開始する」ことも、悪い選択肢ではなくなります。
多少のリスクを伴うでしょうが、それ以上に貴重な経験が社員の成長を加速させたり、新たな取り組みがノウハウとなり、会社の財産となることを考慮すると、リスクを選ぶことで得られるリターンの方が大きいという見方もできます。
たとえ商品開発が失敗に終わっても、その経験から得た知識やスキル、悔しさや自分に足りないものに気づけたことが次の仕事で活かされ、大きな成果を生み出すかもしれません。
思っていたような人材を採用できなかったとしても、それを機に採用活動の大幅な改善が為されたり、会社にとってどのような人材を最も評価すべきか?といった人事の方針が抜本的に見直され、人事評価制度や評価基準の刷新につながることもあるでしょう。
まとめ
今回は、中小企業や小さな会社における「リスクヘッジの考え方」「リスクの取り方」について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
忘れないように、もう一度おさらいしておきましょう。
中小企業のリスクヘッジの考え方 3つのポイント
- 完全にリスクを回避することは、極めて困難であると心得る
- リスクを最小限に抑えようとする場合は、コストを計算する
- まずはリスクを取ることで得られる「リターン」を勘案する
リスクを避けることや、リスクを最小限に抑えることだけに注力すると、一時的にその場はしのげるかもしれませんが、いずれまた似たようなリスクが目の前に現れます。
積極的にリスクを取る必要はありませんが、リスクの程度をしっかり見極めて、そこから得られるリターンを多角的に分析し、会社と社員が成長する機会になると判断するなら、あえてリスクを取る選択は正しいと言えるでしょう。
最後の最後にもうひとつ。
リスクを選ぶことを「投資」に例えるならば、リターンを得るまでには一定の期間を要することもお忘れなく。
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました (^.^)
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