「人事ポリシーの意味や効果が知りたい」
「人事ポリシーを策定する方法とは?」
「お手本となる人事ポリシーの事例を探している」
というあなたに、今回は
- 人事ポリシーとは何か?
- 人事ポリシーの作り方
- 人事ポリシーの事例7社
を解説・ご紹介いたします。
社員のモチベーションアップや優秀な人材を採用するために、場当たり的に給与や賞与を上げたり、職場環境や福利厚生を整えたとしても、短期的には効果があるかもしれませんが、その効果が持続することは決してありません。
対照的に、
- 社員がやりがいをもって生き生きと働いている企業
- 業績が右肩上がりで、会社経営が順調に見える企業
- 社員の離職率が低く、優秀な社員の流出が少ない企業
- 新卒の採用や、新人の育成がうまく機能している企業
は、共通して人事ポリシーを明確に打ち出しているだけでなく、人事ポリシーを社員に浸透させることに長けています。
うまくいっている原因のすべてが人事ポリシーの効果というわけではありませんが、人事ポリシーの作成や浸透が大きく貢献していることは確かです。
人事ポリシーを正しく理解して、自社独自の人事ポリシーを作成し、すべての従業員に浸透させることができれば、人事の根幹を成す採用や育成に関する問題を、あるいは、社員の評価や待遇に関する悩みの大半を解決することができます。
それでは早速見ていきましょう。
人事ポリシーとは
人事ポリシーとは何か?
人事担当者を育成する講座「人事の学校」を主宰し、過去に300社以上の人事に携わってこられた、株式会社フォー・ノーツの代表を務める西尾氏は、ご自身の著書で人事ポリシーを以下のように表現しています。
一言でいうと「会社の社員に対する考え方」。
どんな組織を目指すのか、社員に求めることは何か、何をすれば評価され、給与が上がるのかなど、会社の経営方針を明文化したものです。
出典:西尾 太(2017)『働き方が変わる、会社が変わる、人事ポリシー』株式会社方丈社.
では、なぜ企業にとって、人事ポリシーが必要なのか?
それは、
「募集広告を出しても応募者が少なく、いい人材が採用できない」
「社員がなかなか育たない。自分の頭で考えて行動できる社員が少ない」
「優秀な社員ほど、早く会社を辞める傾向がある」
といった「人」に関連する問題の多くは、会社や経営者の考えと、そこで働く社員の考えがズレていることが主な原因だからです。
そして、会社と社員との間にある大きな溝を埋めるためには、
- 会社が求める人物像や、入社後のキャリアステップ
- 会社が社員を評価する際の基準や、社員に求める能力
- 会社が目指す組織のあり方や、社員に報いる方法
といった「人事ポリシー」を明確に打ち出すことが必要不可欠となります。
人事ポリシーが明確になれば、採用活動において会社と社員のミスマッチをなくすことができるだけでなく、離職率の低下や社員のモチベーションアップにもつながるなど、会社が抱えている「人」に関する多くの問題を一気に解消することも可能です。
上記のことから、人事ポリシーとは、会社と社員が同じ方向を向いて進むための「道しるべ」と言えるでしょう。
社員に求めることを明確にし、それに準じた評価を行なっていけば、会社が求める成果を挙げた社員は評価され、そうでない社員は評価されなくなります。
すると、優秀な人材ほどモチベーションが高まるので「いてほしい人」の定着率が上がり、会社のポリシーに合わない「いてほしくない人」は自然と去っていきます。
その大元になるのものが人事ポリシーなのです。
出典:西尾 太(2017)『働き方が変わる、会社が変わる、人事ポリシー』株式会社方丈社.
人事ポリシーの作り方
人事ポリシーの作り方を、3つのステップで解説いたします。
人事ポリシーの作り方 3ステップ
- 企業理念や組織のあり方を定める
- 会社が求める人物像を明確にする
- 社員を評価する際の基準を決める
前項で申し上げたとおり、人事ポリシーは「会社の社員に対する考え方」ですから、会社の考え方が明確でなければ、人事ポリシーを作るスタート地点に立つことはできません。
加えて、社内外に浸透させるためには明文化する必要がありますから、最終的には読みやすさやわかりやすさ、言い回しや読んだときの印象、文字数や書き方なども含めて、文章全体を整える必要があります。
この記事の最後に「有名企業7社の人事ポリシーの事例」を掲載しておりますので、人事ポリシーの作り方をチェックした後に、人事ポリシーを作成する際のお手本としてご覧くださいませ。
それでは、「人事ポリシーの作り方 3ステップ」ひとつずつ順番に解説いたします。
人事ポリシーを明確にするのは、経営者の仕事です。
経営者の社員に対する「想い」や「願い」を明文化したものが人事ポリシーです。
明文化、つまり文書にして「形」にすることが、人事ポリシーを策定する上でとても重要なポイントです。
出典:西尾 太(2017)『働き方が変わる、会社が変わる、人事ポリシー』株式会社方丈社.
企業理念や組織のあり方を定める
人事ポリシーの作り方、最初のステップは「企業理念や組織のあり方を定める」です。
人事ポリシーを作るためには、大前提として、会社が大切にしている価値観(経営理念)、会社が正しいとする考え方(社是)、会社が目指すべき未来(ビジョン)、会社が果たすべき使命(ミッション)といった「企業理念」が定まっていなければ、会社が求める人物像を明確にイメージすることができません。
さらに、
- 会社にとって、社員とはどのような存在か?
- 社員にとって働く目的や、働く喜びとは?
- どんな社員を育てて、どのような組織を作りたいのか?
など、
社員に対する考え方や、会社が目指す組織のあり方を考える際も、企業理念が軸となります。
上記のことから、
人事ポリシーを作る際は、まずはじめに企業理念を定め、それをもとに社員や組織のあり方を考える。
その上で、会社が求める人物像を明確にしていきます。
人事は、経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー)と社員のベクトルであるキャリアビジョン(仕事上での将来のゴールや目標)やキャリアプラン(キャリアビジョンを実現するための計画)の方向性を合致させていく役割を担っています。
出典:西尾 太(2017)『働き方が変わる、会社が変わる、人事ポリシー』株式会社方丈社.
会社が求める人物像を明確にする
人事ポリシーの作り方、次のステップは「会社が求める人物像を明確にする」です。
企業理念や組織のあり方が定まれば、次のステップでは会社が求める人物像を明確にするために、
- 企業理念に沿った考えや行動ができる人物とは?
- 会社が目指す組織のあり方を実現するために欠かせない人物とは?
- 会社の目的や存在意義を理解し、共に歩める人物とは?
といった質問を自分に投げかけて、その答えを考える過程で「会社が求める人物」に欠かせない要素をピックアップしていきます。
そして、似通ったものがあれば一括りにしたり、重要度をランク付けするなどして、最終的に3~5個の要素に絞り込んで、「会社が求める人物像」を明確に(明文化)するのです。
人事ポリシーの中でも特に重要なのは「求める人材像」を明らかにすることです。
これは、採用、育成、給与、雇用形態など、人事部門全体の根幹となるため、さまざまな角度から考える必要があります。
出典:西尾 太(2017)『働き方が変わる、会社が変わる、人事ポリシー』株式会社方丈社.
社員を評価する際の基準を決める
人事ポリシーの作り方、最後のステップは「社員を評価する際の基準を決める」です。
会社が求める人物像が明確になれば、最後は、
- どのような能力を持った社員を評価するのか?
- どのような行動をとる社員を評価するのか?
- どのような成果をあげた社員を評価するのか?
を考えて、明文化します。
どんな社員が評価されるのか?が明確に示されると、
社員は個人の目標を立てやすくなると同時に、今の自分に足りないものも自ずとわかるようになり、やるべきことも明確になりますから、主体的な行動にもつながります。
加えて、
- 何をすれば給与や賞与がアップしやすいのか?
- キャリアアップするにはどうすればいいか?
も明確になりますから、仕事に対するモチベーションも上がるというわけです。
どんなに給与を上げたり、手当てをつけたり、福利厚生を充実させても、人は仕事そのもののやりがいや人間関係、会社の方針に不満があったら、心からの満足感は得られません。
社員のモチベーションは、お金では買えないのです。
出典:西尾 太(2017)『働き方が変わる、会社が変わる、人事ポリシー』株式会社方丈社.
人事ポリシーの事例【有名企業7社】
人事ポリシーの事例として、有名企業7社の「人事ポリシー」、あるいは「求める人物像」をご紹介いたします。
ご覧いただくとわかりますが、どの企業様も明快なメッセージを発信しており、どんな人材を必要としていて、どんな人材が活躍できるのか?を容易にイメージすることができます。
これから人事ポリシーを作成する会社にとっては、内容だけでなく、表現の仕方や言葉の選び方など、すべてが良きお手本になることでしょう。
なお、ここでは各企業様のページ掲載されている「冒頭のメッセージ」のみ抜粋しておりますので、全文をご覧になりたい場合は、出典先(リンク先)をクリックして、各企業様のページへと移動し、じっくりご覧いただければと思います。
それではあらためて、人事ポリシーのお手本にすべき事例として、有名企業7社の「人事ポリシー」や「求める人物像」を見ていきましょう。
株式会社ユニクロ
ファーストリテイリングは、全社員が、夢・希望・志を持ち、一人一人の自己実現と会社のビジョンの実現が最高レベルで両立する組織を目指しています。
我々の理念や価値観に共感いただき、努力する方には最高の教育とコミュニケーションの場を提供し、経営者へと育てていきます。
出典:人事制度 | ファーストリテイリング 新卒採用
ソフトバンク株式会社
人事ポリシー
継続的な事業の成長・成功を実現するためには、勝ち続けることができる組織であることが不可欠であり、従業員が常に元気で活力にあふれた集団であることが重要と考えています。
ソフトバンクならではの活力を生み出すため、チャレンジする人の可能性を支援し、成果を出した人にはしっかりと応えます。
出典:人事ポリシー | 人事施策・採用 | 企業・IR | ソフトバンク
AGC株式会社
求める人物像
創業の精神「易きになじまず難きにつく」を持ち続けているAGCは、これからも新しいことにどんどん挑戦していきます。
若いうちから一人ひとりが責任ある仕事を担うため、自ら考え、意見・行動し、挑戦できる人を求めています。
出典:求める人物像|採用情報|新卒採用サイト|AGC株式会社
村田機械株式会社
「人間力」を発揮できる、
個性に富んだ人材を待ち望んでいます。
村田機械は、つながる力を鍛えていこうとしています。
5つの事業があり、職種も分野も多岐にわたる村田機械では、独自の個性にあふれた人材が活躍しています。
異なる個性がつながりあい、多様性を受け入れ、一人ひとりの自由な発想や行動が大きな原動力となり、新たなものを生み出していくと考えています。
多様な事業をもつ村田機械では、個人の適性やライフスタイルに合った仕事、やりがいのある仕事を見つけられるはずです。
製品、技術、お客様、そして人との出会いや「つながり」から得られる驚きと喜びを分かち合いながら、素晴らしい未来を拓いていきましょう。
出典:求める人物像|村田機械|採用サイト
株式会社リクルート
人材マネジメントポリシー
リクルートの人材に対する考え方の中核を成す概念です。
「価値の源泉は人」であるという考えを中心に、価値の創造を継続的に最大化するため、個人と会社の関係性として双方がどのような約束を果たし合うべきかを想定しているものです。
個人に対しては、リクルートに在籍する限り個人/チームの進化を続けることを求めます。
会社としては、個人の能力をいかんなく発揮するための機会・環境を提供することを約束しています。
出典:人事制度・仕組み | 株式会社リクルート 中途採用サイト
株式会社NTTファシリティーズ
求める人物像
あなたの個性と能力が
活きる場所。
「Smart & Safety で持続可能な社会の実現に貢献し続ける」
これがNTTファシリティーズの掲げる使命です。
この使命を果たすために、全ての社員に必要なのが
「コミュニケーション×誠実×チームワーク」という3つの資質です。
私たちは、この素質に各々の個性的な能力が掛け合わさることで、仕事の付加価値が高まり、優れたパフォーマンスを発揮することができると考えています。
出典:求める人物像|採用情報|NTTファシリティーズ
アマゾンジャパン株式会社
Amazonでは、全員がリーダーです。
「チームを持つマネージャーであるかどうかにかかわらず、全員がリーダーである」という考えに基づいて、「Our Leadership Principles(以下OLP)」という、全社員が大切にすべき16項目の行動指針があります。
OLPは、採用選考をする際にも重視しているポイントです。
出典:求める人物 | アマゾンジャパンキャリアサイト
まとめ
今回は、
- 人事ポリシーとは何か?
- 人事ポリシーの作り方
- 人事ポリシーの事例7社
について解説・ご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
私が人事ポリシーという言葉に出会ったのは、以前に務めていた会社で、全社員の人事評価について話し合う「評価会議」に参加するようになったことがきっかけでした。
人事のお仕事については、評価会議に参加する以前から採用や育成、部下の人事評価や採用サイトの制作などを行っていましたが、当時は会社の人事ポリシーが定まっていなかったため(現在はわかりませんが)、自分の中で目的やテーマを決めて取り組んでいたように記憶しています。
ところが、各部署の評価者が集う評価会議に参加するようになり、そこで交わされる評価者の意見や考えを聞いていると、違和感を感じることが多々ありました。
あくまで個人的な印象となりますが、各部署で社員に求めていることはなんとなく見えるものの、
- 会社が社員に求めている考え方や行動とは?
- 最も評価すべき社員とは、具体的にどのような社員か?
- 社員が働く上で最も大切にすべきことは何か?
が見えなかったのです。
「このままでいいのだろうか…」というモヤモヤした思いが、「これはちょっとまずいんじゃないか…」という考えに変わるまでに時間はかかりませんでした。
私はその後、人事に関する書籍を何冊か買って個人的に勉強するようになり、その過程で「人事ポリシー」という言葉に出会いました。
人事ポリシーを知った時、私の中で人事に関するいろんなパーツが繋がって、
「なるほど、そういうことか!」
と心から納得できたことを今でも鮮明に覚えています。
そして、人事の仕事の必要性や重要性、やりがいや面白さをあらためて実感し、これまでの人事に対する考え方もアップデートされました。
なので、この記事を読んでくださっているあなたの会社に人事ポリシーがないのであれば、簡単ではありませんが、この機会に人事ポリシーについて考え、ぜひ形にしていただければと思います。
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました (^.^)
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