「人事担当者に求められる能力とは?」
「人事部に配属されたばかりの新人が勉強すべきことは?」
「人事のキャリアアップには何が必要か?」
というあなたに、今回は
- 人事担当者に必要なスキル
- 人事担当者が勉強すべきこと
について、わかりやすく解説いたします。
会社が人の集合体であることを考えると、会社で働く「人」を扱う人事部は、会社の中で最も経営陣に近い部署であり、数十人規模の会社にとっては、最も重要な部署と言っても過言ではありません。
加えて、人事部は人材の採用や育成、人事評価や労務管理など様々な仕事を任せられているため、必要なスキルや勉強すべきことも多岐にわたります。
今回は、人事担当者が人事のキャリアを形成する上で、「成果を出し続けるために必要とされるスキル」や、一人前の人事パーソンになるために「まず最初に勉強すべきこと」について、新人の人事担当者の方にもわかるように、体系的にお伝えしてまいります。
それでは早速見ていきましょう。
人事に必要なスキル
人事に必要なスキルは、大きく分けて3つあります。
人事に必要な3つのスキル
- 事務処理スキル
- コミュニケーションスキル
- 情報収集スキル
人事の仕事は人材採用や人材育成、人事評価や労務管理など、いくつかの異なる業務を抱えていることから、上記3つのスキルが求められます。
数十人規模の会社では、アルバイトやパートタイマーの方も含め、数人で人事部を運営しているケースが多いため、それぞれ得意なスキルを持ち寄ることで3つのスキルをまかなうこともできますが、小規模の会社は人事担当者が一人…という場合もありますから、いずれのスキルも平均点は欲しいところです。
とはいうものの、3つのスキルの中で何かひとつでも得意なスキルがあれば、あるいは、高めることができれば、人事の仕事が円滑に進むに違いありません。
それでは「人事に必要な3つのスキル」をひとつずつ解説いたします。
事務処理スキル
人事に必要なスキル、ひとつ目は「事務処理スキル」です。
人事に必要な事務処理スキルは、3つの要素から成り立っています。
それは、
- 事務処理をテキパキとこなす「スピード」
- 事務仕事をミスなく処理する「正確性」
- 複数の仕事を同時に進行する「段取り」
です。
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
テキパキこなすスピード
事務処理スキルを身につけるには、事務処理をテキパキとこなす「スピード」が求められます。
どれほど正確に書類作成や事務手続きができたとしても、他の人に比べて2倍の時間を費やしていては事務処理スキルが高いとは言えません。
人事のお仕事は、人材の採用や育成、人事評価や労務管理など多岐にわたっているため、ひとつひとつの書類作成や事務手続きにじっくりと時間をかけることなく、スピード感を持って事務的に処理する能力が必要です。
とりわけ、社員数が数十人を超える会社の人事担当者は、「どうすれば効率よく事務処理をこなせるか?」を考えながら、改善を重ねる姿勢が求められます。
ミスなく処理する正確性
事務処理スキルを身につけるには、事務仕事をミスなく処理する「正確性」が必要不可欠です。
どんなに速く書類作成や事務手続きができたとしても、ミスが発覚すれば修正して再提出することになりますから、結果として余計な時間を費やすことになりますし、場合によってはトラブルに発展する可能性も考えられます。
例えば、
新入社員が加入する健康保険や厚生年金といった社会保険関係の手続きは、雇用開始から5日以内に届出を済ませる必要があるため、内容に誤りがあると急いで再提出しなければなりません。
上記のことからも、事務処理スキルを高める上で「正確性」がいかに大切か、おわかりいただけると思います。
仕事を同時に行う段取り
事務処理スキルを身につけるには、複数の仕事を同時に進行するための「段取り」が求められます。
先ほども申し上げた通り、人事のお仕事は人材の採用や育成、人事評価や労務管理など多岐にわたっているため、いくつかの業務を掛け持ちして、同時に進行しなければなりません。
加えて、社員からの問い合わせをはじめ、苦情やトラブルの処理など、突発的に発生する業務に対しても柔軟に対応しなければなりませんから、普段から段取り良く事務処理を行う必要があります。
コミュニケーションスキル
人事に必要なスキル、2つ目は「コミュニケーションスキル」です。
人事に必要なコミュニケーションスキルは、3つの要素から成り立っています。
それは、
- 相手の話に真摯に耳を傾け、心から理解しようとする「傾聴力」
- 相手の立場に立って、明快かつ、わかりやすく伝える「伝達力」
- 目的を見据え、考えや価値観が異なる人とも調和する「協調性」
です。
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
心から理解しようとする傾聴力
コミュニケーションスキルを身につけるには、相手の話に真摯に耳を傾け、心から理解しようとする「傾聴力」が求められます。
「傾聴」とは、相手が話す内容を否定することなく、熱心に相手の話を「聴く」ことです。
相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら、耳から入ってくる情報だけでなく、話し方や表情、仕草といった「相手から感じ取れるすべての情報」に注意を払い、相手が伝えたいことを心で受け止める行為と言ってもいいでしょう。
面接に訪れた学生や求職者と話をするとき、職場の人間関係に悩む社員から相談されたとき、社長と今後の人事戦略について意見を交わすとき、言葉の裏側に潜んでいる本心を理解するには傾聴力が欠かせません。
明快かつ、わかりやすい伝達力
コミュニケーションスキルを身につけるには、相手の立場に立って、明快かつ、わかりやすく伝える「伝達力」が求められます。
例えば、年末が近づくと、年末調整に必要な「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」など、全社員に記入・提出してもらう書類を配布しますが、その際、記入方法や注意点をわかりやすく伝えることができなければ、多くの社員から質問攻めにあうことになり、記入ミスによる修正依頼も増えてしまいます。
自社の採用ページや募集広告に記載する内容についても、自社の魅力や仕事内容をわかりやすく伝えることができなければ、応募数にも影響しますから、相手にとってわかりやすく伝える「伝達力」は、極めて重要です。
なお、伝達力は「話がわかりやすい」というだけでなく、わかりやすい文章を書く「ライティングスキル」も含まれます。
考えが違う人と調和する協調性
コミュニケーションスキルを身につけるには、共通の目的を見据えた上で、考えや価値観が異なる人とも調和する「協調性」が求められます。
協調性とは文字通り「協力して調和すること」を意味します。
協調性がある人は、いろんな価値観や考えを持つ人たちと折り合いをつけて、自分の考えに執着することなく、相手の考えや気持ちにも配慮しながら円滑に仕事を進めることができる人です。
人事担当者は社内外を問わず、多くの人と関わるポジションであるとともに、多くの人の協力を得ることができなければ大きな成果を上げることはできません。
社内では社長や幹部、役職者や全ての従業員と関わりを持ち、社外では人材採用や育成に関わる人をはじめ、社会保険労務士や産業医、新卒の学生や転職活動中の求職者など様々な人と関わりを持つことになります。
社内の人の協力がなければ人事制度の改革はできませんし、社外の人の協力がなければ採用や研修がスムーズにいかないことは想像に難くありません。
情報収集スキル
人事に必要なスキル、3つ目は「情報収集スキル」です。
人事に必要な情報収集スキルは、3つの要素から成り立っています。
それは、
- 「社長の意向」を確かめる
- 「社員の心情」を理解する
- 「社外の状況」を把握する
です。
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
社長の意向を確かめる
情報収集スキルを身につけるには、日頃から「社長の意向」を確かめておく必要があります。
「社長の意向」とは、社長の心が向かっている方向であり、「こうしてみたらどうだろう」という社長の考えです。
人材の採用や育成、人事評価や労務管理といった人事の仕事は、会社のトップである社長の意向に沿ったものでなければなりません。
もちろん、社長はビジョンやミッション、経営理念や社是といった「会社の理念」を尊重するとともに、言動が伴っていることが大前提となります。
人事担当者が何か新しいことを始めるとき、関連情報を集めることも大切ですが、今一度、社長の意向や会社が掲げている理念を確かめることを忘れてはなりません。
社員の心情を理解する
情報収集スキルを身につけるには、日頃から「社員の心情」を理解しておく必要があります。
「社員の心情」とは、社員が口にする言葉や会話の内容ではなく、社員が心の中で思っている「本当のこと」、つまり「本心」と言えるものです。
社員の心情を察することができないまま、社員への影響が大きい人事評価制度や福利厚生の改革を進めてしまうと、社員は「自分たちのことを何もわかっていない」と感じて、非協力的な態度を示したり、会社に対する印象を悪くして、場合によっては離職率の上昇を招くことになりかねません。
人事担当者が社員に関わる施策や制度改革を行うとき、自らの考えや価値観をいったん脇に置いて、まずはじめにやるべきことは「社員の心情」を理解することです。
社外の状況を把握する
情報収集スキルを身につけるには、日頃から「社外の状況」を把握しておく必要があります。
世の中の変化に伴い、働き方やライフスタイルも常に変化しており、当然ながら、人事や労務に関連する法律や制度も変化しています。
人材採用においては自社で応募サイトを作成する企業が増えたり、人材教育や研修の現場ではオンラインセミナーや動画コンテンツを利用したり、帳簿付けにおいてはクラウド会計ソフトを、労務管理にはクラウド労務ソフトを利用するなど、IT技術の革新によって、人事を取り巻く環境や人事の仕事のやり方が大きく変化していることは皆様もご存知の通りです。
人事の仕事を今よりもスピーディーかつ正確にこなし、少ない人数で効率よく行うためには、そして、働きやすい環境作りや優秀な人材を採用するためには、社外から最新の情報を入手することによって、人事を取り巻く世の中の状況を把握することが求められます。
人事担当者が勉強すべきこと
人事担当者が勉強すべきことは何か?
とりわけ人事部に配属されたばかりの人事担当者は、人事に必要な(有効な)資格やスキルアップに目が行きがちですが、実は、それ以前に人事担当者が勉強すべきことが3つあります。
人事担当者が勉強すべきこと
- 会社の理念や経営方針
- 人事関連の制度や法律
- メンタルヘルスケア
人事に求められる能力を高めるには経験を要しますし、人事の仕事に有効とされる資格は試験に合格しなければなりませんが、上記の「人事担当者が勉強すべきこと」は、その気があれば短期間で身につけることができますし、人事のキャリアアップを図る上では欠かせません。
配属されたばかりの新人だけでなく、ベテランの人事担当者の方もあらためてチェックしていただき、足りないものがあれば、今からでも遅くはありませんから、少しずつでも勉強していただくと、その成果を実感していただけると思います。
それではひとつずつ詳しく見ていきましょう。
会社の理念や経営方針
人事担当者が勉強すべきこと、ひとつ目は「会社の理念や経営方針」です。
会社の理念とは、「会社の根底にある、変わることのない考え方」であり、企業理念と呼ばれることもあります。
代表的な会社の理念には、経営理念や社是、ビジョンやミッションなどがあり、会社経営の根幹を成す考え方や価値観を言語化したものです。
一方、経営方針とは、会社の理念をもとに考えられた、会社が思い描く未来を実現するための具体的な方向性や活動の方針を意味します。
では、なぜ人事担当者が会社の理念や経営方針を勉強しなければならないのか?
理由は2つあります。
ひとつ目の理由は、人事制度の改革や改善を行う際、会社の理念や経営方針に沿ったものでなければ一貫性に欠けるため、社員に浸透させることが難しいから。
2つ目の理由は、採用活動において、会社説明会や面接を行う際に、会社の代表として会社の理念や経営方針を伝える、または、質問されることが多いからです。
とりわけ採用の現場では、会社の理念や経営方針だけでなく、会社の歴史や業績をはじめ、職場の雰囲気や社員の内訳など、現在の会社の状況を正確に把握しておかなければ、求職者からの質問に対して即答することができません。
自社のことを聞かれて言葉に詰まるようでは、会社のイメージダウンにもつながりかねませんから、人事担当者は会社の理念や経営方針のみならず、自社について何を聞かれてもいいように勉強する必要があります。
人事関連の制度や法律
人事担当者が勉強すべきこと、2つ目は「人事関連の制度や法律」です。
人事のお仕事は、社会保険や雇用保険の手続きをはじめ、入社・退職の手続きなど、法律や制度を熟知していることで活躍できる仕事が多いため、人事や労務に関する法律および制度に関する知識は勉強しておいた方がいいでしょう。
加えて、法改正や制度改正が行われた際は、経営陣に対して「何がどう変わるのか?」「どのような対策または変更を加える必要があるのか?」をわかりやすく伝えなければならないため、ある程度の知識は必要です。
さらに、人事担当者は従業員から休憩や有給、賃金や労働時間といった「労働条件」や、職場環境や共有スペースなどの「労働環境」による相談や質問を受けることも多いため、自社の就業規則を把握するとともに、労働基準法についても理解しておかなければなりません。
自社の労働条件や労働環境を整備・改善する際も、労働基準法を遵守する必要がありますから、社員に噛み砕いて説明できるくらいの知識は持っておいた方が良いでしょう。
メンタルヘルスケア
人事担当者が勉強すべきこと、3つ目は「メンタルヘルスケア」です。
メンタルヘルスケアとは、すべての従業員が心も体も健康な状態で働けるように、従業員のメンタル(精神)面をサポートすることであり、そのような活動がスムーズに行われる体制を整えることです。
「働き方改革」が叫ばれるようになり、少しずつ長時間労働が減ってはいるものの、依然として過労や激務、様々なハラスメントや人間関係によるストレスが原因で、心身に不調をきたす方が後を絶ちません。
精神的なストレスを抱えるようになると、
- 集中力が低下して、本来のパフォーマンスが発揮できなくなる
- 判断力が鈍くなるとともに、重要な決断ができなくなる
- 遅刻や早退、病欠が増え、悪化すると長期休業や離職につながる
など、本人にとっても、会社にとっても大きなダメージとなります。
そんなことにならないように、日頃からメンタルヘルスケアを学び、実践するとともに、従業員の精神的なストレスを少しでも軽減できるように、職場環境や労働条件の改善に努めることが求められます。
まとめ
今回は、
- 人事担当者に必要なスキル
- 人事担当者が勉強すべきこと
について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
忘れないように、もう一度おさらいしておきましょう。
人事に必要な3つのスキル
- 事務処理スキル
- コミュニケーションスキル
- 情報収集スキル
人事担当者が勉強すべきこと
- 会社の理念や経営方針
- 人事関連の制度や法律
- メンタルヘルスケア
私も以前勤めていた会社では、自分が所属する部署の採用と育成を担当しながら、自分が中心となって採用サイトの作成を行なっていました。
加えて、役職者でもあったことから、部下の人事評価や1対1の面談をはじめ、個別に人間関係や職場環境に関する相談や悩みに応えていましたので、人事部に所属していたわけではありませんが、人事の重要性については理解しているつもりです。
そして、人事に関連する仕事をやればやるほど、会社にとって重要かつ優先すべきことがあまりにも多いことに気づかされ、良い意味で人事の仕事に対する見方が変わったように思います。
同時に、人事の仕事は多岐にわたっている上、全社員に影響を及ぼすことが多いため、経営陣や役職者をはじめ、社会保険労務士さんや産業医さんなど、周りの方の協力が欠かせないことも知りました。
人事のお仕事は人を相手にしているだけに、スムーズにいかないことも多々ありますが、従業員満足度を上げる大切なお仕事ですし、その分「やりがい」も大きく、会社の成長に欠かせません。
みなさんはどう思われますか?
最後にもうひとつ。
「日々の業務に追われて、重要な仕事に費やす時間が足りない…」
「経営戦略や人事、新事業について専門分野の人に相談したい…」
という経営者・役員・マネージャーの皆様に画期的なサービスを2つご紹介いたします。
そのサービスとは、
- オンラインアシスタント
- スポットコンサルティング
です。
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ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただき、ほんとうにありがとうございました (^.^)