「先行者利益とは何か?」
「先行者利益と後発者利益との違いは何?」
「先行者利益を狙ったマーケティング戦略は常に正しい?」
というあなたに、今回は、
- 先行者利益の意味
- 先行者利益と後発者利益の違い
- 先行者利益を狙った戦略は、マーケティングの基本戦略となり得るか?
について解説いたします。
言葉の響きから、「先行者利益=良いこと」と思われがちですが、先行者利益の意味や後発者利益との違いを正しく理解すると、先行者利益を狙う場面と、あえて先行者利益を狙わない場面がわかるようになります。
それでは早速見ていきましょう。
先行者利益とは?
先行者利益とは何か。
ビジネスにおける先行者利益とは、世の中にない商品やサービスを開発することによって、新たな市場を作り(新たな市場へ参入し)、競合他社が存在しない状況で、一気にシェアを拡大することで得られる利益やメリットを意味します。
別の言い方として、「先行者優位」「先発優位」「先駆者利益」とも呼ばれています。
そして、先行者利益は主に3つあります。
先行者利益とは?
- 商品の真新しさによって、話題性や注目度が高まる
- 他社を気にすることなく、自由に価格設定ができる
- 「先駆者」や「開拓者」といった肩書きが得られる
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
話題性による注目度
ビジネスにおける先行者利益とは?
ひとつ目は、商品の真新しさによって、話題性や注目度が高まることです。
これまでにない新技術や新素材、新たな用途や使い方を取り入れた商品やサービスは、誰も目にしたことがないだけに、「消費者に受け入れらるかどうかわからない…」という少々ギャンブル的なリスクはあるものの、大きな話題を集めます。
iPhoneのような期待通りの大ヒット商品もあれば、セグウェイのように市場から姿を消してしまった商品もありますが、どちらの商品にも共通して言えることは、話題性や注目度はかなり高かったということです。
自由なプライシング
ビジネスにおける先行者利益とは?
2つ目は、自由なプライシング(価格設定)ができることです。
商品やサービスをどこよりも早く市場に投入すると、当然ながら似たような商品やサービスはまだ出回っていませんから、競合他社を気にせず、ある程度こちらの都合で販売価格を設定することができます。
世界初の家庭用ロボット掃除機の「ルンバ」しかり、ヘッドホンステレオを初めて世に送り出したソニーのウォークマンしかり、今思えば発売当時の価格は少しお高く感じるかもしれません。
しかし「家庭用ロボット掃除機」や「ヘッドホンステレオ」が欲しければ、他に選択肢はありませんでしたから、自由にプライシングできるメリットは大きいと言えます。
先駆者という肩書き
ビジネスにおける先行者利益とは?
3つ目は、先駆者あるいは開拓者の肩書きが得られることです。
「最初に始めた」「最初に作った」「最初に広めた」という肩書きは、販促プロモーションを行う上で大きなアドバンテージとなります。
「日本で初めて〇〇を作った会社」「世界で初めて〇〇を始めた会社」という肩書きは、お客様に歴史を感じさせる他、そのことが信頼や信用につながり、友人同士や職場の同僚との話題にも上がりやすく、紹介や口コミも期待できます。
さらに利益には直結しないかもしれませんが、初めて世に姿を現した商品やサービスは、歴史にその名を残すことができるのもひとつの特徴です。
例えば現在は「プラズマクラスター」でおなじみの家電メーカー「シャープ」が開発した「ノックして芯を繰り出せるペン」は、筆記具の新たなジャンルを確立し、今もなお「シャープペンシル」として多くの人に親しまれています。
先行者利益と後発者利益の違い
先行者利益と後発者利益との違いは何か?
後発者利益とは、すでに存在する市場に参入したり、類似する商品やサービスを開発することによって得られる利益やメリットです。
先に申し上げた通り「日本初」「世界初」と言われるような新商品や新サービスを、他社に先駆けて発売、またはリリースするという「先行者利益」を狙った商品の販売戦略は、リスクも伴いますが、うまくいけば大きなメリットを得られます。
では、他社が先に発売した商品と似たような商品を後から出す、「後出しジャンケン」による商品の販売戦略は通用しないのか?というと、そんなことはありません。
実は、後から発売する会社にも、先行者利益にはない大きなメリットがあるのです。
そのメリットとは、
- 調査・分析する時間
- 創造する時間
- 考える時間
が与えられるということです。
つまり、後から発売する会社は、先に発売されている商品の特徴や売れ行きの動向を詳しく調査・分析することによって、
「どんな人が買っているのか?」
「どんなお店で売れているのか?」
「どんな時期に、どんな時間帯に売れているのか?」
といったさまざまな情報を得ることができます。
あるいは購入者の声から
- 不足している要素
- 改善してほしい点
をリサーチし、それらを踏まえて商品を開発すれば、場合によっては、すでに出回っている商品よりもお客様に選んでいただくことができます。
ただし、上記の調査・分析から得られた内容やお客様の声は、これから市場に参入しようと考えている会社もある程度調べた上で商品を開発しますから、いわゆる「2匹目のどじょう」を狙っている会社の中から、さらに頭ひとつ抜きん出なければ、本当の意味で後発者利益の恩恵を受けることはできません。
「だったら、やはり先行者を目指すべきでは?」
と思われるかもしれませんが、後から商品やサービスをリリースする会社には「創造する時間」「考える時間」が与えられることを忘れてはいけません。
先行者利益はマーケティングに有効?
先行者利益を狙う戦略ことは、マーケティングの基本戦略となり得るか?
「明後日にできることを、明日に回してはいけない」
マーク・トウェイン アメリカの小説家
上記は、『ハックルベリー・フィンの冒険』『トム・ソーヤーの冒険』などを書いたアメリカの小説家「マーク・トウェイン」の名言です。
最初にこの言葉を読んだ時、
「???」
と思い、小さい頃に誰かに言われた記憶がある「今日できることを明日に回してはいけない」という言葉を思い出しましたが、よく見ると「明後日にできることを、明日???」と書かれているではありませんか。
「前倒ししちゃいけないの?」
「早めにやってはいけないの?」
と、思ってしまいますよね?
その他にも、名言ではありませんが、みなさんもご存知の世界的な名画「モナ・リザ」の制作期間にまつわる、「早くやる」ことについて考えさせられるエピソードをご紹介しましょう。
作者であるレオナルド・ダ・ヴィンチは1503年から「モナ・リザ」を描きはじめ、何年かは描いてはやめるという行為を繰り返したのちに放置…。
ようやく完成させたのは、描き始めてから実に16年後、亡くなる直前の1519年でした。
どうして何年もの間、「モナ・リザ」を描くことを止めていたのでしょう?
何か先延ばしにすべき理由があったのでしょうか?
さらに私ごとではありますが、過去にバラエティグッズを扱っている商社で勤めていた頃にも、とあるメーカーが「世の中にないまったく新しい商品」を発売した後に、悲しいかな、それを真似て競合他社が後から発売した「パクリ商品」の方が爆発的に売れる…ということが何度もありました。
「早くやる」ことを良しとしない、むしろ「急がない」「じっくり構える」「先延ばしにする」ことを推奨するこれらの名言やエピソード、そして自身の体験は何を物語っているのでしょう。
あらためて最初の問いに戻ります。
先行者利益を狙う戦略ことは、マーケティングの基本戦略となり得るか?
確かに、イノベーションと呼ばれるような、これまでにない新しい商品やサービス、画期的な仕組みや方法を生み出すことに成功すれば、大きな先行者利益を得られます。
しかし、場合によっては、「戦略的な先延ばし」を行う方が、得策かもしれません。
とりわけ、企画やデザイン、作曲や演出、執筆のお仕事など、創作活動を主になさっている方にとって、クリエイティブな分野における「創造する時間」や「考える時間」はたいへん貴重で何にも代えがたいものです。
時間をかけるほど良いものを生み出せるわけではありませんが、創造するための時間や考えるための時間は、あればあるほど助かります。
「何か良いアイデアはないか?」
「何か良い方法はないか?」
とアンテナを張って日々過ごしていると、ある日突然ひらめいたり、仕事とは全く関係がないものからインスピレーションを得たりすることが往々にしてあります。
それが「いつ起こるか」はわからないものの、そのためには時間が必要であることだけは間違いありません。
私が書いているこのブログも、実は元となる原稿を書いてから、時間を空けては見直して、何度も書き直してやっと完成…と思って翌日に最終確認したら気になるところを見つけ、また書き直し…みたいなことがしょっちゅうあります。
なので、後から書き直すことも計算に入れた上で、書いた原稿をすぐに公開するのではなく、意図的に時間を空けて何回かチェックするというルーティーンを作り、「意図的な先延ばし」を行うことで改善を重ね、記事の完成度を上げるように努めています。
「先延ばし」は業界ナンバーワンを目指している大企業や、生産性を求める会社では不向きかもしれませんが、創造性を必要とするデザインやクリエイティブな仕事、あるいは中小企業や小さい会社との相性は抜群です。
先行者利益を狙うも良し、戦略的な先延ばしをするも良し。
扱う商品やサービス、チャレンジする事業によって、どうやら使い分ける必要がありそうですね。
まとめ
今回は、先行者利益について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
忘れないように、もう一度、3つの先行者利益をおさらいしておきましょう。
先行者利益とは?
- 商品の真新しさによって、話題性や注目度が高まる
- 他社を気にすることなく、自由に価格設定ができる
- 「先駆者」や「開拓者」といった肩書きが得られる
企業は
「世の中にない商品やサービスをいかに早く生み出すか?」
を競うものではありません。
しかしながら、世の中にない画期的な商品をいち早く市場に投入することで、大きな先行者利益が得られることも事実。
一方で、先に発売された画期的な商品を調査・分析し、じっくりと時間をかけて
「いかに優れた商品やサービスを開発することができるか?」
を考え、創造することでオリジナリティを発揮する方法、つまり
「あえて先延ばしすること」
による商品の販売戦略も存在します。
どちらが良いか?は一概には言えませんが、上記のことを念頭において、先行者利益を狙った「発売スピード重視の販売戦略」と、後発者の恩恵を受けながら、時間をかけて改善を重ねながら進める「先延ばしによる販売戦略」とを分けて考え、目的に応じて使い分けることが大切です。
商品やサービスが溢れかえっている今日、全く新しい商品やサービスを開発することは、多くの時間と労力を費やすだけでなく、大きなリスクも伴います。
資金や人などのリソースが豊富な大企業ならともかく、中小企業や小さい会社が、需要があるかどうかもわからない商品を開発するとなると、会社の命運を左右することになりかねません。
上記の理由から、中小企業のみなさまは先行者利益を狙うよりも、「考える時間」や「創造する時間」をフルに活用しながらアイデアを出し合い、知恵を絞って、自分たちにしかできないオンリーワンの商品やサービスを生み出す方法をオススメします。
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ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただき、ほんとうにありがとうございました (^.^)
参考文献 グラント, アダム(2016)『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(楠木建訳)三笠書房.