「人事異動の大まかな流れを掴みたい」
「あらためて人事異動の正しい手順を確かめたい」
「人事異動のプロセスを幹部社員に説明したい」
というあなたに、今回は、人事異動の準備段階から候補者選び、内示や辞令、発令後のフォローまで、その流れや手順を時系列に沿ってわかりやすく解説いたします。
人事異動を実行したことがある社長様や幹部の方はご存知かもしれませんが、しっかりした人事部が存在する大企業ならともかく、人事部が存在しない中小企業や小さな会社は、大抵の場合、人事異動が当初の予定通りに進みません…。
私が過去に勤めていた会社でも、ギリギリのバタバタで人事異動が行われた年が何度かありました。
人事異動は目的ではなく、会社の業績アップのひとつの手段ですから、まずは経営計画や事業計画、売上目標を設定することが必要不可欠です。
その辺りも含め、今回の記事では「人事異動」というイベントを軸にして、準備から発令までのプロセスを網羅してまいります。
それでは早速見ていきましょう。
人事異動の流れや手順
人事異動の流れや手順を、時系列に沿ってわかりやすく解説します。
人事異動は、やり方を誤ると効果が半減したり、トラブルの原因となりますから、大まかな流れを理解し、正しい手順を踏んで慎重に進めなければなりません。
以下、人事異動のプロセスをまとめましたので、ご参考にしていただければ幸いです。
人事異動の流れや手順
- 目的や理由を明らかにする
- 職務に必要な要件を定める
- 候補者をリストアップする
- 内示を出す(同意を得る)
- 辞令を出す(社内に公表)
- 異動した後も気にかける
それではひとつずつ見ていきましょう。
目的や理由を明らかにする
当たり前ですが、目的や理由もなく、ただ人事異動を行って意味がありません。
人事異動の発令は、会社のビジョンやミッションをあらためて確認した上で、来季の経営計画や事業計画に沿って目標を達成するために、「どのような布陣で挑むのか?」という、組織体制や人材配置の方向性を考えることから始まります。
- 既存の商品を強化する
- 新たな商品開発を行う
- 業務プロセスを改善する
など、費用対効果を高めるために「今最も重要なことは何か?」をよく考えて、
まずは「どこに多くの経営資源を投入するか?」を具体的に考えましょう。
もちろん、何か新しいことを始めるときは既存の活動を合理化したり縮小するなど、「何かを削る行為」も必要となりますから、それも同時に行う必要があります。
「選択と集中」を実行する前に、会社の事業をあらためて見直して、
「無理や無駄はないか?」
「もっとシンプルにできないか?」
「顧客ニーズに応えられているか?」
という質問を自身に投げかけてみると、為すべきことが見えてくるでしょう。
職務に必要な要件を定める
会社にとって重要かつ優先すべきことが定まれば、そこに投入する人的資源(必要とする人数)とともに、職務を全うするための要件を定義します。
仮にAというプロジェクトを実行するのであれば、
実現する過程で必須となる業務は何か?
どのような人格やスキルが求められるのか?
を明らかにして、それぞれの業務に適した人材の特徴を明確化しましょう。
単純に過去の経験やスキル、人事評価を重視するのではなく、
- 細かい作業が得意で正確にこなす
- ムードメーカーの役割を果たす明るい性格
- 誰とでも気さくに話ができる
- 文章を書くのが得意
- 流行に敏感で探究心が強い
- 服装がおしゃれでセンスを感じさせる
など、好ましいと思われる個性や得意なことなども要件に加えておくと、思わぬ成果が期待できます。
候補者をリストアップする
職務に必要な要件が定まれば、次は新たな組織を再編成するにあたり、異動させる候補者を選びます。
候補者を選ぶ際は、一人だけでなく複数名の社員をリストアップして、その中から最適な人選を行いましょう。
学力テストの点数で決めるのであれば、最も高い得点をとった人を指名すればいいだけですが、職務に適した人材を選ぶとなると、そう簡単にはいきません。
人それぞれ価値観やものの見方も異なりますし、自分はAさんが最適だと思っても、別の人はBさんしかいないと思っていることが往々にしてありますから、複数の候補者を挙げて
「誰が一番能力が高いか?」
を基準にするのではなく、あくまでも
「誰がこの職務に適しているか?」
を基準に選んでください。
最終的には意思決定者の決断に委ねられますが、その場合も必ず数人の意見や考えを聞いてから、それらを参考にして決めるようにしましょう。
内示を出す(同意を得る)
人事異動を行う場合は、内示を出して、事前に本人の同意を得る必要があります。
一般的に人事権は会社が持っていますから、極論を言うと、就業規則や雇用契約書が定める範囲内であれば、会社の都合で人事異動の決定を下すことは可能です。
しかしながら、異動する本人が心から同意していなければ、配置転換が裏目に出てしまうことがあります。
中には
「自分は今の部署で必要とされていない…」
「もう少し今の部署で頑張って結果を残したい」
と思っている社員もいるでしょうから、そのような社員がいきなり別の部署への異動を告げられた場合、最悪の場合、会社を辞める事態にもなりかねません。
そんなことにならないように、今回の人事異動の目的や、新たな場所で頑張って欲しいという期待を本人に伝えた上で、できれば納得いくまで話し合ってから決めるようにしましょう。
なお内示を出すタイミングは、業務の引継ぎや転居の有無なども考慮して、可能であれば正式な辞令の2カ月前、遅くとも2週間から1カ月前が一般的です。
辞令を出す(社内に公表)
遅くとも、人事異動の2週間〜1ヶ月前には辞令を出します。
その際に、可能な限り人事異動の目的や理由を社内に公表しましょう。
全社員がそれを聞いて納得できるかどうかは別にして、代表者の口から全社員に目的や理由を発信する行為自体が大切ですし、そうすることに意味があります。
その際、
「なぜこの時期にそれを行うのか?」
「どんな未来を実現したいのか?」
「具体的にどのような活動を行うのか?」
をできるだけ自分の言葉で熱く語ってください。
その思いは必ず社員に響きますし、それを聞いた社員は安心します。
逆に目的やビジョンが告げられず、ただ決定事項だけが発表されると、社員は思い思いに自分の解釈でその内容を捉え、自分の価値観や考えに従って判断することになります。
もちろん前向きに捉えてくれる社員ばかりではありません。
人事異動を言い渡された当事者も、内示の際に詳しい内容は聞かされていますが、目的やビジョンが公表されることで、あらためて使命感や責任感のスイッチが入るでしょう。
なお、人事異動の辞令を出す際は、所属期間に空白が生まれないように、「現部署の解任日」と「新部署への異動日」が同日にする必要があります。
異動した後も気にかける
新たな組織体制でスタートが切られた後も、人事異動した社員に関しては定期的に声をかけて、見守る姿勢が必要です。
新しい仕事や新しい仲間、新しい上司など、目の前の状況が一変するため、新たな環境に慣れるまではある程度の時間を要します。
社歴の浅い社員に限らず、長く勤めている社員であっても、それまでの間は定期的に話を聞く機会を設けて、メンタル面のサポートを行ってください。
まずは本人が
「環境が変わっても、自分の力を発揮できる」
という自信を持つことが何よりも大切です。
自信がが備わってくるにつれて、仕事に対するやりがいや意欲も生まれ、積極性や周りの人を気遣う余裕も生まれてきます。
職場のコミュニケーションが円滑になると、周りの社員の見る目も変わり、チームワークも向上しますから、あとは流れに従って行動あるのみ。
人事異動から生まれた好循環が社内全体に広がると、
「自分も新しい環境でリスタートしたい」
という社員が現れたり、
「うちの会社はまだまだこれから!」
といった上昇ムードも高まります。
まとめ
今回は、人事異動の流れや手順を時系列に沿って解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
最後にもう一度おさらいしておきましょう。
人事異動の流れや手順
- 目的や理由を明らかにする
- 職務に必要な要件を定める
- 候補者をリストアップする
- 内示を出す(同意を得る)
- 辞令を出す(社内に公表)
- 異動した後も気にかける
個人的なお話ですが、前職のネット印刷に勤めていた頃、入社してからまだ間もない10ヶ月目に、東京への人事異動(転勤)を言い渡された経験があります。
大阪本社で採用され、数ヶ月後には難波店へ、そして1年も経たないうちに新宿営業所に異動。
その衝撃たるや、驚きを通り越して、開き直りというか、
「もう好きにしてください…」
という感じでした。
最初は、「新宿営業所のリニューアルを1ヶ月ほど手伝って欲しい」
ということだったので、大阪の自宅をそのままにして、東京に乗り込んだのですが、もう少しで1ヶ月になろうかというときに、
「やっぱり軌道に乗るまで3ヶ月ほど滞在して欲しい」
と告げられ、3ヶ月目が終わろうかというときに、
「1年くらいやってみるか!」
と言われ、大阪の自宅を引き払って東京へ引っ越しすることに…。
もうすぐ1年が過ぎるという頃には、なんとなく嫌な予感はしていたのですが、それが見事に的中して「3年いて欲しい」と言われ、結局は5年間も東京で過ごすことになりました。
人事異動によって生活環境は一変し、誰一人として知り合いのいない東京で過ごした5年間は、今思えば貴重な経験だったと振り返ることができますが、当時は仕事でもプライベートもで大きな悩みを抱え、体調も崩すなど、毎日が必死でした。
そして5年後にやっとのことで本社に戻った時は、まさに「浦島太郎」状態…。
知っている人はほとんどいなくなり、周りからは「この人誰?」というよそよそしい雰囲気…。
実に寂しい状況からの再スタートとなりました。
人事異動は、従業員の人生を左右するほどの大きなターニングポイントとなります。
だからこそ、人事異動を実施する側は、会社と従業員の双方がプラスに転じるように、余裕をもって準備を整え、納得できるまで話し合い、実施後も定期的にフォローするなど、最大限の配慮が必要です。
会社の未来と従業員の未来がより良いものになるように、ぜひ人事異動を「良いきっかけ」に変えていただければと思います。
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました (^.^)
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