「イノベーションを起こすにはどのような環境が適しているか?」
「イノベーションが生まれる組織風土とは?」
「イノベーションを阻害する最も大きな要因は何?」
というあなたに、今回は、
イノベーションを起こすにはどうすればいいか?
という大きな問いに対して、
- イノベーションを起こす職場環境
- イノベーションを起こす組織風土
- イノベーションを起こす阻害要因
という、異なる3つの視点から考察いたします。
イノベーションを起こす方法については、さまざまな考え方や切り口があり、イノベーションを起こす人や条件について論じているものもあれば、イノベーションにつながるアイデアを出す手法など、多種多様です。
しかし、どの方法を選んだとしても、必ずイノベーションを起こせるわけではありません。
何かを達成するためには、「これをやると必ずうまくいく」という方法を選ぶよりも、「これをやると必ず失敗する」という方法を知って、それを避けることの方が、結果として早く、そして着実にゴールに近づきます。
これからご紹介する内容を実践することによって、「イノベーションを起こせる」というお約束はできませんが、「イノベーションを起こすために必要な要素」であることは間違いありません。
イノベーションを起こす確率を高めるために、そして、「イノベーションを起こす」というゴールに向かって着実に歩を進めるために、ぜひご一読いただくとともに、実践していただければ幸いです。
それでは早速みていきましょう。
イノベーションを起こすには?
イノベーションを起こすにはどうすればいいか?
大前提として、イノベーションとは目的ではなく、あくまでも「結果」です。
イノベーションは「技術革新」と呼ばれることもありますが、本来の意味は「新たな価値を創造すること」であり、世の中に大きなインパクトを与えた革新的な製品やサービス、ビジネスに多大な影響を及ぼした仕組みや方法です。
つまり、
イノベーションを起こすにはどうすればいいか?
を要約すると、
世の中に大きなインパクトを与えるほどの革新的な製品やサービス、ビジネスに多大な影響を及ぼすほどの仕組みや方法を生み出すためにはどうすればいいか?
となります。
その点を踏まえた上で、あらためて
イノベーションを起こすにはどうすればいいか?
という問いに答えるならば、
イノベーションを起こすには?
- イノベーションが生まれやすい環境を整える
- イノベーションが生まれる組織風土をつくる
- イノベーションの最も大きな阻害要因を知る
となります。
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
イノベーションを起こす環境
イノベーションを起こす環境とは一体どのようなものか。
一言で言うと、新たなチャレンジを良しとする環境です。
「職場にチャレンジしやすい空気が流れている」
「新たなチャレンジを推奨し、支援する体制が整っている」
など、チャレンジすることは「良いこと」だとする会社の姿勢が明確に示されている環境こそ、イノベーションを起こす環境と言えるのではないでしょうか。
イノベーションが生まれやすい会社は、そうでない会社に比べて、ミスに対する姿勢や考え方がまったく異なります。
失敗やミスが起こったとき、失敗やミスを起こした本人だけを責めるような会社では、新しいことに挑戦しようと考える社員は育ちません。
なぜなら、新しいことにチャレンジすると失敗やミスは避けられませんし、慣れきった仕事だけを行う方が失敗する確率は低く、ミスも生まれにくいからです。
対照的に、失敗やミスが起きたとしても、周りの社員がすかさずフォローしてくれる職場は、精神的なプレッシャーも少ないため、失敗やミスを引きずることもありませんし、社員が安心して目の前の仕事に取り組めますから、結果として新たな提案や挑戦も生まれやすくなります。
そのような会社は、失敗やミスを防止する改善策についても部署単位で考え、ミスが起こらない仕組みを導入するにあたって費用が発生する場合も、会社が渋ることなく積極的に投資する姿勢が見られます。
つまり「イノベーションを起こす環境」とは、ひとりの失敗やミスも周りの社員が自分ごとのように捉え、そこに居合わせた人が全員で
どうすれば改善できるか?
どうすればもっと会社が良くなるか?
という視点で物事を考えることができる組織・会社と言えるでしょう。
会社が社員を大切に扱い、社員が顧客を大切に思い、顧客が気持ちよく会社の商品やサービスを利用する…そんな好循環が社員のチャレンジ精神を育み、そこから生まれた新たな商品やサービスがイノベーションを起こすのです。
イノベーションというのは花のようなもので、それ自体を人為的に生み出すことはできないのです。
我々ができるのは、花が育ちやすい土壌と環境を整えて十分に栄養と日光を注いでやることだけです。
出典:山口周(2017)『知的戦闘力を高める独学の技法』ダイヤモンド社 .
イノベーションを起こす組織風土
イノベーションを起こす組織風土とは、一体どのようなものか?
組織風土とは、組織に属する人間が持っている考え方や価値観のことで、今まで組織を構成していた人たちの価値観や考え方が大きく影響、反映されます。
では、イノベーションを起こす組織風土、つまり、イノベーションを起こすために必要な考え方や価値観とは何か?
それは、誤解を恐れず言うならば、
「ミスの削減よりも、顧客ニーズに応えることを重視する」
といった考え方や価値観です。
だからといって、決してミスの削減を軽視しているわけではありません。
ミスを削減する、あるいはミスが根本的に起こらないようにすることは重要かつ必須です。
しかしながら、ミスの頻度が極めて少なく、ミスが起こっても迅速にリカバリーできるような体制を整えているのであれば、過度にミスをゼロにする対策を行うよりも、より多くの顧客ニーズに応えることを中心に据えた活動を重視すべきでしょう。
ミスの削減や、ミス撲滅を部署の目標に掲げている会社も見受けられますが、目標設定にまで「ミスの削減」が登場すると、社員は
「誰のために仕事をしているのか?」
「何のために働いているのか?」
を見失ってしまいます。
そして、ミスの削減を目標に据える最も大きなは弊害は、社員のチャレンジ精神が奪われることです。
「ミスをしてはいけない」
「ミスをすると評価が下がる」
「ミスをなくすことが重要」
という考え方や価値観が浸透すると、そこで働く社員は極度にリスクを嫌い、失敗やミスを避けようとするあまり、与えられた仕事だけをこなすようになります。
ただただミスをしないように気をつけて、ミスが起きてしまったら自分を責める…そんな職場から新たなチャレンジが生まれるはずもなく、創造力を発揮することもなければ、技術が進歩することもありません。
それだけならまだしも、自分が起こしてしまった失敗やミスを上司から激しく叱責されたり、それによって大きく評価が下がるようなことがあれば、失敗やミスを隠そうとする社員も現れます。
それが大きくなると会社内で偽装や隠蔽が行われるようになり、世間を騒がすような会社の不祥事に繋がるなど、イノベーションを起こすどころか、会社の存続さえ危ぶまれる事態に発展しかねません。
致命的なミスはできるだけ回避しなければなりませんし、ミスを削減することも大切ですが、新たな価値を創造することに社員の意識を向けさせるような組織風土が根付かなければ、いつまで経ってもイノベーションを起こすことはできないでしょう。
組織風土は、これまで培ってきた組織の伝統や取り組み方、古くから在籍している従業員の言動が元となっていますから、簡単に変えることはできないかもしれません。
しかし、小さなチャレンジを繰り返して、小さな成功を積み重ねていくことで、ひとり、またひとり、と周りの人間を巻き込みながら、少しずつではありますが、変えていくことは可能です。
そして、組織内において、新たなチャレンジが珍しいことではなくなった時、イノベーションが生まれる組織風土はしっかり根付いたと言えるでしょう。


イノベーションの阻害要因
イノベーションを阻害する要因とは何か?
イノベーションを起こす環境が整い、組織風土が変わることによって、チャレンジ精神を持った社員が増え、社内で新たな取り組みに挑戦する動きや、既存の仕組みを改善する活動が活発化します。
そうなれば「イノベーションが起きるのも時間の問題」…と思いきや、実はもうひとつ、超えなければならない大きな壁が目の前に立ちはだかります。
その「大きな壁」とは、「みんなの意見」です。
つまり「みんながいいと思うものに流されてしまう」、あるいは「多数決で物事を決める」ことです。
「みんなの意見」は、イノベーションを起こす上で、最も大きな阻害要因と言っても過言ではありません。
誰もが「いいね」と称賛するアイデアは、成功する確率が低い
これは私が新しい商品やサービス、仕組みや方法を考えるときに教訓としていることでもあります。
「みんながいい」と思うものは安全でリスクが低く、誰もが簡単に思いつくアイデアと言えますから、「みんながいい」と思うアイデアを実行したところで、イノベーションを起こすことはできません。
そもそもイノベーションを起こすような商品やサービスなどは、アイデア段階では「実現が不可能ではないか?」と酷評されたり、「本当に需要があるの?」と疑問視されることが多く、革新的な商品やサービスは、それらの批判や疑いを乗り越えた先にあるものです。
例えば、今でこそ当たり前のように利用している「クロネコヤマトの宅急便」は、個人宅への配達を郵便局が独占していた時代に、ヤマト運輸が業績を立て直すための施策として始めたサービスですが、スタートするまでは採算が合わないとして役員から猛反対を受けていました。
ネットショップのAmazonも1999年末から2000年末にかけて、物流センターへの投資によって巨額の赤字を続け、株価は大幅に下落し、倒産するのは時間の問題という見方もありましたが、大方の予想を裏切り、結果としてIT技術とリアルな物流センターの融合によって復活を果たし、世界最高水準の在庫回転率を誇るネットショップの王様として今もなお君臨しています。
上記の会社は、いずれも多くの人の理解を得られない、まさに逆風の中を進むことになりましたが、アイデアを考えた人の頭の中には明確なビジョンが既にあり、理論的にも実現可能であることがわかっていて、必ず実現できるという確信を持っていたのでしょう。
強い信念と揺るぎない自信がなければできないことだとは思いますが、彼らのチャレンジ精神のおかげで私たちは新たな価値を享受し、その恩恵を受けていることを考えると、心から感謝しなければなりません。
まとめ
今回は、「イノベーションを起こすにはどうすればいいか?」という大きな問いに対して、
- イノベーションを起こす職場環境
- イノベーションを起こす組織風土
- イノベーションを起こす阻害要因
という、3つの視点から考察しましたが、いかがでしたでしょうか。
私自身、これまで多くの商品やサービスをプロデュースしてまいりました。
それらの商品やサービスが、すべて「イノベーションを起こせたか?」と言われると、残念ながら、大きな声で「もちろん!」と答えることはできません。
しかし、世の中に大きなインパクトを与えることはできませんでしたが、限られた業界や競合他社の間で噂になるくらいのインパクトなら、何度か与えた経験があります。
その時のことをあらためて思い出してみると、やはり
- 新たなチャレンジをどんどん推奨する職場環境
- 前向きな行動によるミスを許容してくれる組織風土
があったように感じます。
あとは、良くも悪くも、私自身が周りの意見に耳を傾けながらも、自分の直感を信じて突き進むタイプだったので、イノベーションの阻害要因とされる「みんなの意見」は右から左に流していました…。
そのため、一部の人たちから向かい風をまともに受けることもありましたが、結果を出すことで、少しずつ周りの理解を得て行ったように思います。
今となっては、もう少し別のやり方があったかも…と思うことも多々ありますが…。
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました (^.^)
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