「コーチングの基本的なやり方を確かめたい」
「コーチングの使い方や、使いどころを知りたい」
「コーチングを部下育成に活用したいと考えている」
というあなたに、今回は
- コーチングのやり方を、7つのステップでわかりやすく解説
- コーチングの使い方を、2つの側面からわかりやすく解説
いたします。
社内コーチとして本格的にコーチングを行う場合は、コーチングスクールでコーチングに必要とされるマインドやスキルを習得する必要がありますが、コーチングの基本的なやり方を知っているだけでも、部下の主体的な行動をサポートしたり、部下のモチベーションを高めることはできます。
加えて、コーチングの正しい使い方を知っていると、コーチングが有効に機能するケースとそうでないケースを見分けることができる他、自分がコーチングを受けるときに、コーチングの効果を最大限に高めることもできます。
今回お伝えする内容は、コーチングのやり方や使い方を確かめたいとお考えの方に限らず、
- 近いうちにコーチングを受ける、または、受けたいと思っている
- コーチングのやり方を部下との面談に取り入れたいと考えている
- コーチングに興味があり、社内コーチングの導入を検討している
という方にとっても、
コーチングの効果や流れ、活用法を知る上で、ご参考にしていただけると思います。
それでは早速見ていきましょう。
コーチングのやり方
コーチングのやり方を7つのステップに分けて解説します。
以下に示す「コーチングのやり方 7つのステップ」は、企業におけるリーダー育成や組織マネジメントといった、行動することをサポートする「ビジネスコーチング」がベースとなっております。
部下にコーチングを行う場合は、コーチングの手順を知るための手引きとしてご覧いただき、これから専任のコーチをつけて自己変革を促したいとお考えの方は、大まかなコーチングの流れを掴むために、ご参考にしていただければ幸いです。
なお、心理的な課題にアプローチする「メンタルコーチング」には当てはまらない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
コーチングのやり方 7つのステップ
- コーチングが有効に機能するか?を見定める
- コーチとクライアントの「相性」を確かめる
- 目的やゴール、目標をや達成基準を明確にする
- 目標の達成に必要な成長課題を明らかにする
- 目標達成に向けて、綿密な行動計画を作成する
- 対話を通じて、軌道修正しながら実践する
- 目標の達成度や、コーチングの効果を検証する
それではひとつずつ詳しく見ていきましょう。
コーチングの有効性を見定める
コーチングのやり方、最初のステップは、
「コーチングが有効に機能するか?を見定める」です。
コーチングは、クライアントが抱えている問題をすべて解消できるわけではありませんから、コーチングを開始する前に、クライアントの現状を正確に把握することに努め、
「コーチングが最もふさわしい方法であるか?」
を、あらためて見定める必要があります。
知識やスキルが足りていないだけなら、ティーチングが効果的ですし、心を病んでいるのであればカウンセリングの方が有効かもしれません。
コーチングとは、クライアント自身が定めた目標達成に必要とされる「スキル・知識・考え方」に気づかせて、クライアントが自発的に行動することをサポートするプロセスです。
そのため、コーチングを開始する前に、コーチングが有効に機能するか?を見定めましょう。
コーチとクライアントの相性を確認
コーチングのやり方、次のステップは、
「コーチとクライアントの相性を確かめる」です。
コーチングは、コーチとクライアントの信頼関係の上に成り立っています。
クライアントがコーチに心を閉ざしたままでは、いくら対話を重ねたとしてもコーチングの成果は上がりません。
そのため、社内コーチングにおいて、上司が部下に対してコーチングを行う場合は、日頃から信頼関係の構築に努めることが大切です。
加えて、コーチはクライアントが本音で話すことができるように、守秘義務を(交わす)果たすことはもちろん、お互いをよく知るために、まずは自分のことを積極的に話すようにしましょう。
話す内容は仕事のことに限らず、プライベートや家族のこと、趣味や週末の過ごし方など、どんなことでもかまいません。
そうすることによってクライアントの警戒心が解け、代わりに親近感や安心感が生まれ、話しやすい環境が作られます。
それでもクライアントが「合わない」「本音で話せない」と感じるようであれば、別のコーチとのコーチングを考えるべきでしょう。
目的やゴール、目標や達成基準を設定
コーチングのやり方、3つ目のステップは、
「目的やゴール、目標をや達成基準を明確にする」です。
目的とは、「どうなりたいか?」「どうありたいか?」を表すもので、「やりがい」や「生きがい」と言えるものです。
ゴールとは、目的を果たすために成すべきことや、到達したい地点を意味します。
そして、目標とは、ゴールに到達するまでの過程で達成すべき数値や、必要とされるもの(こと)で、具体的には経験や実績、資格などがあります。
例えば、
「部下の人間的成長を支えるビジネスリーダーになる」
をコーチングの目的に据えた場合、
「部長になる」というゴールを設定することもできますし、「リーダーとして部下を率いてプロジェクトを成功させる」というゴールを設定することもできます。
もちろん、2つのゴールを同時に設定してもかまいません。
上記のゴールを設定したなら、次はゴールに到達する「通過点」をいくつか考えて、それらを目標とします。
例えば、
「リーダーとして部下を率いてプロジェクトを成功させる」
というゴールを設定した場合、
- 売上〇〇円や会員数〇〇人
- 期日までにプロジェクトを始動する
- A社と業務提携を結ぶ
- 部下が自ら考えて動くチームを作る
など、ゴールにたどり着くまでに達成すべき具体的な数値や実績を、目標に設定します。
それともうひとつ。
目標を設定する際は、達成基準も明確にしておく必要があります。
数値目標は測定しやすいので問題ありませんが、「部下が自ら考えて動くチームを作る」といった目標を設定した場合は、
- どういう状態になれば目標を達成したと言えるのか?
- 目標を達成したかどうか?をどうやって確かめるのか?
を、あらかじめ考えておかなければなりません。
上記の場合、例えば、プロジェクト終了後、部下全員にアンケートを実施して、
「7割の部下が『自ら考えて動くチームを作ることができた』と回答した場合は目標達成とする」
といった明確な達成基準をあらかじめ設けておきます。
目標が定まると、そこに向けてエネルギーを集中させることができますが、同時に、目標が明確に定まることで、現状との差異を明確に認識することができるようになります。
人はこの目標と現状との差異を放っておくことが苦手です。
そのため、目標に向けて自身の現状を変えていこうとするエネルギーが生まれ、これが成長への原動力となるのです。
出典:コーチ・エィ(2019)『新版 コーチングの基本』株式会社日本実業出版社.
目標達成に必要な成長課題を挙げる
コーチングのやり方、4つ目のステップは、
「目標を達成する上で、クリアすべき成長課題を明確にする」です。
ゴールや目標が明確になると、そこに到達するまでに「足りないもの」や「障害となるもの」が自ずと見えてきますから、
- 足りないものを補うためには、何を身につけるべきか?誰の協力が必要か?
- 障害に立ち向かう、あるいは、障害を乗り越えるためにはどうすればいいか?
を考えて、自分が成長するために乗り越えるべき課題を明確にしましょう。
目標を達成するために必要な成長課題が明確になれば、具体的にどのような行動をとるべきか?も明確になりますので、行動計画が立てやすくなります。
コーチングの対話は、クライアントの内側に眠っている潜在的な目的意識を顕在化させていくプロセスでもあります。
こうした目的意識が詳細に言語化されたとき、それがビジョンとなっていきます。
そして、ビジョンに至る具体的なマイルストーン(中間地点や節目のポイント)が見えてくると、それが目標となり、エネルギーを集中させる焦点となるのです。
同時に、目標が明確化する中で、現在の立ち位置との差が明確となり、その差の中に「乗り越えるべき成長テーマ」が見つかるのです。
出典:コーチ・エィ(2019)『新版 コーチングの基本』株式会社日本実業出版社.
目標の達成に向けて行動計画を作成
コーチングのやり方、5つ目のステップは、
「目標の達成に向けて、具体的な行動計画を作成する」です。
ゴールや目標を設定し、成長課題が明確になれば、次は具体的な行動計画を作成します。
行動計画を作成する際のポイントは、ゴールに到達するまでのストーリーをイメージしながら、
- どの成長課題から取り組むべきか?
- どの成長課題を優先すべきか?
を考えて、できるだけスムーズにゴールにたどり着けるように、成長課題に取り組む順番や優先度を決めることです。
例えば、
- 部下の成長よりも、仕事の結果を重視しがち
- チームメンバーとのコミュニケーション不足
- 意思決定のスピードが遅く、決断力に欠ける
という成長課題が明確になった場合、
- まずはチームメンバーとのコミュニケーションの活性化を図り、部下との信頼関係を構築することを優先する。
- その上で、部下の意見や考えも汲み取りながら、意思決定プロセスを明確にして、同時に自身の決断力を磨く。
- 次に、自分の責任の範囲で少しずつ裁量権を部下に与え、部下に考えさせる機会を増やしながら成長を支援する。
という具合に、
ゴールまでの道のりをイメージしながら、成長課題に取り組む順番と優先度を決めます。
対話を通じて軌道修正しながら実践
コーチングのやり方、6つ目のステップは、
「コーチとの対話を通じて、軌道修正しながら実践を繰り返す」です。
成長課題に取り組む順番や優先度を考慮した上で、綿密な行動計画を立てたからといって、何の障害も無くスムーズにゴールまで辿るつけるというわけではありません。
不測の事態が起きることもあれば、何かのきっかけで急激にモチベーションが下がることもありますから、定期的にコーチからのフィードバックを受けながら行動計画を細かく修正して、目の前のハードルをひとつずつ、そして、確実に超えていけるように行動し続ける。
そうすることで、やがては成長課題を克服し、気がつけばいくつかの目標を達成し、着実にゴールに近づくことができます。
コーチングでは、クライアントが何度も困難な成長課題に直面します。
途中で前進することを諦めかけるケース、自信を失い前進の意欲を低下させたりするケースは、決して少なくありません。
そうしたときに、クライアントに伴走しているコーチに求められることは、クライアントが常に「目的」や「目標」から目をそらさないようにすること、そして前進できる「可能性」に着目し続けることなのです。
出典:コーチ・エィ(2019)『新版 コーチングの基本』株式会社日本実業出版社.
達成度やコーチングの効果を検証
コーチングのやり方、最後のステップは、
「目標の達成度や、コーチングの効果を検証する」です。
コーチング期間が終了したなら、
- どれくらいゴールに近づくことができたか?
- 目標をいくつ達成できたか?その達成度は?
- 自分の中でどのような変化が起こったのか?
など、コーチングによる具体的な効果を検証しましょう。
結果がどんなものであったとしても、自らゴールや目標を設定し、行動計画を立てて主体的に取り組んだ経験と実績は、今後いろんな仕事と向き合う際に大きな自信となります。
「自分は自ら掲げた目標に向けて、主体的に行動することができる」
「自分は周りの人に影響を与えながら、状況を変えることができる」
「自分は困難が起きても諦めることなく、立ち向かうことができる」
そのような実感を得ることができたなら、「コーチングは効果的であった」「コーチングが有効に機能した」と言えるのではないでしょうか。
端的に表現するならば、コーチが目指したいのは、「成果を出し続けるための能力開発」です。
そのため、目前の目標達成を話題にしながらも、今後、クライアントが走り続ける上で必要となる「思考・行動の習慣」に焦点を当てる必要もあるのです。
出典:コーチ・エィ(2019)『新版 コーチングの基本』株式会社日本実業出版社.
コーチングの使い方
コーチングの使い方を、2つの側面からわかりやすく解説します。
コーチングの使い方
- コーチングはどんなとき、どんな相手(クライアント)に対して有効に機能するのか?
- コーチングを上手に活用するには、クライアントはどんなことに気をつけるべきか?
コーチングの使い方を知ると、コーチングの効果を最大限に発揮することができますから、コーチングを行うコーチだけでなく、コーチング受けるクライアントも、コーチングを開始する前に「コーチングの正しい使い方」を確認することをオススメいたします。
それでは早速見ていきましょう。
コーチングが有効な相手、有効なケース
コーチングの使い方、ひとつ目は「コーチングの使いどころ」です。
「コーチングはどんな相手に有効か?どんなケースに適しているのか?」
を知ることは、コーチングのミスマッチを避けるとともに、コーチングの効果を最大限に発揮することにつながります。
コーチングが有効な相手、有効なケース
- 知識やスキルは備わっているが、なかなか行動することができない
- 目標に向けて行動してはいるものの、期待するほどの結果が出ない
- 仕事の目的や目標を見失ってしまい、モチベーションが上がらない
- 自分の頭で考えて、主体的かつ積極的に行動できる人材の育成
- リーダーシップを発揮して、組織をマネジメントできる人材の育成
- 成果を出し続けるための能力開発および、思考・行動の習慣化
上記は一例に過ぎません。
コーチングが「気づきを与えることによって、クライアントの中にある答えを引き出す行為」であることを考えると、クライアントの中に何かしらの可能性や、ダイヤの原石が隠されていると感じる場合は、コーチングが有効に機能すると考えられます。
コーチングを有効活用するために
コーチングの使い方、2つ目は「コーチングの活用方法」です。
「コーチングを上手に活用するには、どんなことに気をつける必要があるのか?」
を知ることは、コーチングの効果を高めるとともに、「クライアントが受けたいコーチング」を実現することにつながります。
クライアントがコーチングを有効活用するコツ
- コーチに対して、コーチングの進め方や約束事を自ら考え、提案する
- 前もってコーチングの失敗例をコーチから聞き出し、回避するよう努める
- 目的意識を強く持ち、自らが主役となってコーチングを主導する
- コーチングを受けるタイミングや期間、時間配分などを自分で決める
- 少しでも気になることがあれば、コーチから積極的にフィードバックをもらう
コーチングは「受ける」ものではなく、自分の成長のために「利用する」ものと考え、コーチングを行う際は常に自分(クライアント)が主導権を握り、「コーチを使う」というくらいの意識を持って、自らの意思で選択・決定を行うことが大切です。
コーチからクライアントを見たとき、クライアントが
「コーチングをやらされている」
「コーチングに取り組む意識が低い」
と感じる場合はコーチングをいったん中断し、その理由を確かめるとともに、コーチングの目的や有用性を伝えましょう。
それでもクライアントの意識に変化が見られないようであれば、今はコーチングを行うべきではないと判断して、コーチングを中止する方が賢明かもしれません。
まとめ
今回は、コーチングに馴染みがない方でも分かるように、コーチングのやり方や使い方をわかりやすく解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
忘れないように、最後にもう一度「コーチングのやり方」をおさらいしておきましょう。
コーチングのやり方 7つのステップ
- コーチングが有効に機能するか?を見定める
- コーチとクライアントの「相性」を確かめる
- 目的やゴール、目標をや達成基準を明確にする
- 目標の達成に必要な成長課題を明らかにする
- 目標達成に向けて、綿密な行動計画を作成する
- 対話を通じて、軌道修正しながら実践する
- 目標の達成度や、コーチングの効果を検証する
近い将来、社内コーチとして本格的に部下をコーチングしたいとお考えの方は、コーチングを学ぶだけでなく、コーチングを実際に受けてみることで、
- コーチに求めることや、コーチに欠かせないもの
- コーチが最も大切にしなければならないこと
を感じ取っていただければと思います。
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました (^.^)
以下、この記事を読んでくださった方へ「オススメの記事」をピックアップしましたので、お時間がございましたらぜひご一読くださいませ。
- 参考文献:コーチ・エィ(2019)『新版 コーチングの基本』株式会社日本実業出版社.
- 参考文献:谷口貴彦(2016)『ザ・コーチ 最高の自分に気づく本』株式会社小学館.