「中小企業が生き残るためには、どのような戦略をとるべきか?」
そんな問いに、今回は「中小企業の生き残り戦略」と題して、ひとつの答えを提案いたします。
東京商工リサーチによると、2018年に倒産した企業の平均寿命は23.9年(※)。
(※)2018年に全国で倒産した8,235件(負債1,000万円以上)のうち、創業年月が不明の1,226件を除く、7,009件が対象
この数字はあくまで「平均」寿命なので、当然ながら、1年で倒産する企業もあれば、50年の会社経営に幕を閉じる企業も含まれています。
あなたが経営している、あるいは、働いている会社は平均寿命を超えていますか?
「超えられそうにない…」「超えられるかどうか不安…」という方はもちろん、「もう超えている」という方も、変化が激しい時代を乗り切るために、ぜひ最後までお読みください。
それでは早速みていきましょう。
中小企業の生き残り戦略
結論から申し上げましょう。
中小企業の生き残り戦略は、ズバリ「自社商品の開発」にあります。
すでに自社のオリジナル商品を販売している場合は、新商品や新サービスを定期的に生み出すことが、中小企業における生き残り戦略になり得ます。
自社商品を開発することが、なぜ中小企業の生き残り戦略につながるのか?
それは、
- 自社商品を開発することで、独自のノウハウが蓄積できる
- 自社商品の開発を経験することで、本物の人材を育成できる
- 自社商品を開発すること自体が、会社の危機管理に直結する
からです。
もちろん、中小企業の生き残り戦略が自社商品の開発だけというわけではありませんが、今日の予測不可能な時代にあって、既存の事業や商品に頼るばかりでは、企業の継続的な成長は望めません。
それでは、自社商品の開発が中小企業の生き残り戦略につながる理由について、ひとつずつ詳しくみていきましょう。
ノウハウを蓄積する
中小企業が生き残るためには、自社で培った、自社独自の「ノウハウ」が欠かせません。
「商品開発=新たなチャレンジ」は、言うなれば未知の世界への扉を開くことを意味します。
日常の業務に慣れきってしまうと毎日の仕事が「作業」に変わり、それ以上のことを考えたり、提案したり、積極的に行動することがいつしか億劫になってしまい、「現状維持=心地よい状態」から抜け出せなくなります。
たいていの人は変化を嫌いますから、自ら率先して行動する一部の社員を除いて、定期的に環境を変えてあげることが必要です。
そういう意味において、新商品や新サービスを開発するというミッションは、まさに「うってつけ」。
心地良い状態から抜け出す良いきっかけになることはもちろん、日々「目的を達成しなければならない!」という指令が脳内を刺激し続けますから、能動的に動かざるをえません。
するとどうなるか?
「もっといい方法はないか?」
「もっと美しいデザインにできないか?」
「もっと便利にするためにはどうすればいいか?」
と自分の頭で考えながら、いろんな方法を試して行動を積み重ねるうちに、時間はかかるかもしれませんが、自然と上手なやり方やコツがつかめるようになってきます。
そこで生み出された独自の方法やコツが抽象化されて、ひとつにカタチになる時、「ノウハウ」と呼ばれるものが誕生します。
仕事に限って言うと、
ノウハウとは「特定の仕事をスムーズに行うための知識や技術、方法や手順、コツや考え方」です。
ノウハウを習得するには、今まで経験したことがない新たな課題を設定して、その課題をクリアするために試行錯誤しながら行動し続けるしか方法はありません。
すなわち自社商品を開発することが、新たなノウハウを獲得し、蓄積することにつながるのです。
くどいようですが、それ以外の方法でノウハウを身につけることはできません。
たとえ開発した商品やサービスが全く売れず(利用されず)、あるいは鳴かず飛ばずに終わったとしても、その経験を通して得たノウハウは必ず次の商品開発に活かされます。
そしてこの「ノウハウの蓄積」こそが、中小企業が生き残るために必要なのです。
今売れている商品やサービスも、何かのきっかけでいつ売れなくなってしまうかわかりません。
そんな時、これまで蓄積してきた自社独自のノウハウがあれば、ゼロから商品やサービスを開発するよりも、短い期間で商品を開発したり、ノウハウ自体が商品となることもあります。
ノウハウは使えば使うほど磨きがかかり、ご存知の方も多いと思いますが、「トヨタ生産方式」みたいな独自の仕組みが出来上がることもあります。
もし私が「どうすればヒット商品を生み出せるか?」
という質問をされたら、適切な答えを見つけることはできませんが、
「どうすれば中小企業が生き残ることができるか?」
という質問に対しては、
「できるだけ多くの経験を積み重ねてノウハウを蓄積すること」と即座に答えるでしょう。
本物の人材を育てる
中小企業が生き残るためには、自社商品の開発を行うことによる本物の「人材育成」が欠かせません。
自社商品の開発は、メンバーの潜在能力を引き出す大きなきっかけとなります。
潜在能力とは「既に持っているけど表に現れていない能力」です。
潜在能力を引き出すためには、本人が自分の持っている能力に「気づく」必要があります。
そして、日々の業務の中では、自分の中に埋もれている能力に「気づく」ことはできません。
社長や幹部の間で「社員を育てる」という話になると、「〇〇人材育成プログラム」「〇〇人材教育システム」といった仕組みを導入しようとする動きが起こります。
講師を会社に招いてセミナーを受講させたり、1泊2日の研修に参加させるなど、すぐに外部の会社に頼ろうとする傾向があるようです。
そのほうが手っ取り早いですし、とりあえず「やった気になる」のでしょう。
社長や幹部のお気持ちはとても理解できますし、一定の効果はあるのかもしれませんが、人間はそう簡単に変われる生き物ではありません。
ためになる本を何冊読んでも、行動に移さなければ意味がないのと同じ。
実際に行動して壁にぶち当たり、その度に自分の頭で考え、失敗や成功を繰り返しながら少しずつ自信が持てるようになり、気がつけば知識や技術が身についていて、自分の隠れた能力や得意なことがわかってくる…。
少々面倒ですが、このステップを抜きにして社員が成長することはありません。
人はそれぞれ個性があり、性格も違えば価値観も異なります。
そんな人たちに同じ話を聞かせて一律の指導をしたところで、必要最低限のことを教えることはできても、全体的なベースアップを図ることは難しいと考えます。
ましてや個々の潜在能力を開花させるとなれば、なおさらです。
人材育成は必要最低限のマナーなどに止め、そこに予算を投じるのではなく、自社商品の開発を通じて、自分の頭で考えさせる経験を数多く積ませたほうがよっぽど人材育成に繋がります。
あるいは社員の個性を生かしながら「良いところをもっと伸ばす」方向で個別に指導したり、自社商品の開発を通して成功や失敗をメンバーと共に分かちあい、お互いを尊重することで協調性やコミュニケーション能力を育むことこそ、「多様性」が叫ばれる今日の社会に必要な「本物の人材育成」と呼べるのではないでしょうか。
学校教育に例えるとお分かり頂けると思いますが、同じ授業を行っていても、成績優秀な子供と勉強が苦手な子供が生まれるのはなぜでしょう?
できる子はどんどんできるようになり、苦手な子は何かのきっかけがなければ勉強を好きになることもありませんし、もちろん成績が上がることもありません。
人材育成セミナーや人材教育システムを導入するのであれば、
「社員を育てるとはどういうことか?」
「社員にどうなって欲しいのか?」
などを明確にして、過度に期待せず、受講や導入を検討することをオススメいたします。
引き出しを増やす
中小企業が生き残るためには、自社商品の開発を行うで「引き出しを増やす」ことが重要です。
「ここ数年、売上や客数も減少傾向。何か新しいことを始めなければ…」
「新型ウイルスの流行で、主力商品が軒並み売れなくなってしまった…」
「仕入れ先で災害が起きて原材料を確保できず、商品が生産できない…」
未来を予測できればいいのですが、残念ながら私たちが生きている世界では、時として予測不可能な事態が突然起こります。
VUCA(「ブーカ」と読みます)という言葉をご存知でしょうか?
VUCAとは4つの形容詞の頭文字を合わせた言葉で、Volatile(不安定)、Uncertain(不確実)、Complex(複雑)、Ambiguous(曖昧)の意味を持った、今日の予測不可能な社会を言い表す用語です。
不安定で不確実、複雑で曖昧な今日において中小企業が生き残るためには、あらゆる危機に備えておく必要があります。
言うまでもありませんが、危機は台風や地震といった自然災害だけでなく、リーマンショックのような経済危機、新型ウイルスの流行による未知の病原菌がもたらすパンデミック、仕入先の倒産や社員の不祥事など様々です。
これらの危機は予測することが不可能で、ある程度は個別に対策を講じることはできても、根本的にはその都度対応を迫られることになりますから、「日頃からどう備えるか?」がポイントとなります。
そのためには、何が起きてもある程度の期間は事業が継続できるように、利益を生み出すいろんな「引き出し」を持っておくことが「危機に対する備え」となり、売上の減少を最小限に抑える唯一の方法と言っても過言ではありません。
例えば食品を製造している会社であれば、製造過程で生まれる成分を利用して、化粧品や健康食品を作ったり、食品を加工する過程で廃棄していた成分を有機肥料にするなど、新たな自社商品を開発を模索してみるのです。
そうすることで、メインの食品が何かの原因で製造することができなくなったとしても、新たに始めた商品の製造は継続できるかもしれません。
会社の倉庫に防災グッズの準備をすることも大切ですが、どんな危機が訪れても会社が事業を継続できるように、新たなチャレンジに投資すること、つまり「継続的に商品開発すること」が会社の危機管理に直結するというわけです。
まとめ
今回は、中小企業の生き残り戦略となる「自社商品の開発」について、その理由を解説しました。
忘れないように、最後にもう一度おさらいしておきましょう。
- 自社商品を開発することで、独自のノウハウが蓄積できるから
- 自社商品の開発を経験することで、本物の人材を育成できるから
- 自社商品を開発すること自体が、会社の危機管理に直結するから
自社でオリジナル商品を開発するとなると、何もかもがゼロからのスタートのように感じるかもしれませんが、逆にいうと、その分だけ吸収できるものが多く、学びの機会が与えられるということ。
初めて商品開発にチャレンジする企業様は、既存の商品やサービスに近いものから新たな商品を開発するのがオススメです。
私がネット印刷で勤めていた頃、新サービスとして「名入れボールペン」をスタートさせました。
自社の設備では(当時は)紙への印刷しかできなかったので、名入れペンは未知の領域でしたが、「印刷する」という意味では共通していたので、サービスを開始するにあたって、それほど抵抗を感じなかったことを覚えています。
余談になりますが、名入れボールペンの事業は、私が会社を去る頃には年間数千万円の売上をつくるまでに成長して、それなりの結果を残すことができました。
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました (^.^)
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