これからの商品開発に必要なことは何か?
世の中をさらに便利で快適にする最先端の技術?
それとも、もっと高品質で低価格なモノづくり?
安くていい商品がネットで簡単に買えるこの時代、お客様に選ばれる商品を世に送り出すためには、どのような視点で商品を開発すればいいのでしょうか。
今回は、
「これからの商品開発に、最も必要なことは何か?」
という難問に、ひとつの答えを示したいと思います。
人によっては商品開発に対するこれまでの考え方を大きく覆すような内容となっておりますが、頭の中を一旦リセットして、真っ白な状態でお読みいただければ、今後の商品開発に大きな意味をもたらすことをお約束いたします。
それでは早速みていきましょう!
商品開発に必要なこと 〜3つの未来視点
これからの商品開発に必要なことは何か?
モノが溢れている今日、商品開発を行うことは簡単ではありません。
ユニクロやニトリを代表するように、低価格でありながらも一定の品質をキープしている「安くていい商品」が増える中、中小企業や小さな会社の商品開発はますます厳しくなっています。
そんな時代にあって、「商品開発に必要なことは?」と聞かれたら、私は迷わず
「新たな価値を創造すること」
と答えるでしょう。
では新たな価値を創造するためにはどうすればいいか?
それは、「役に立つ」「問題解決」「必要である」といった従来の価値観に注視するのではなく、お客様に心から共感していただける「未来の視点」を持つことです。
3つの未来視点
- 意味がある
- 問題の提起
- 欲しくなる
「3つの未来視点」を持って商品開発を行うならば、類似商品と価格で比較されることなく、お客様の感性を刺激することで、商品を手にとっていただくことができるでしょう。
「私が欲しかったものはこれだ」
「探していた商品がやっと見つかった」
お客様にそう言ってもらえるように、この記事をお読みになって、「3つの未来視点」を意識しながら商品開発を行い、世の中に新たな価値を創造していただければうれしく思います。
それでは、「3つの未来視点」をひとつずつ詳しくみていきましょう。
「役に立つ」ではなく「意味がある」
新たな価値を創造する3つの未来視点。
ひとつ目は「意味がある」です。
便利で使い勝手がいいだけでなく、安らぎや快適さ、美しさや誠実さ、安心や信頼を物語る開発ストーリーなど、自分にとって何かしらの「意味がある商品を開発する」という視点です。
便利で役に立つ商品やサービスは世界中に溢れています。
そして便利で役に立つ商品やサービスは、最も便利で最も役に立つものだけが「一人勝ち」する可能性が高く、その他の商品が劣勢を挽回することは極めて困難と言わざるを得ません。
例えば総合ネットショップのAmazonは、国内における2018年度の売上高がなんと1兆3360億円!(国家予算ですね…)
総合ネットショップで2位につけている楽天(Rakuten Direct)が740億円ですから、その差はなんと18倍以上もあり、まさに一人勝ち状態。(引用元:【2018年版】EC売上高ランキングまとめ)
※ ただし楽天はショッピングモールなので、楽天に出店している個々のお店が属するECショップのカテゴリーでランキングを見た場合は、状況が変わります。
そして皆さんも毎日ググっている検索エンジンのグーグルは、2019年現在、36か国で約90%のシェアを握っていると言われていますから、これも文句なしの一人勝ちです。
総合ネットショップや検索エンジンは「いかに便利で使いやすいか?」、つまり「役に立つ」という基準のみで選ばれることが多いため、最も便利で使いやすい商品(サービス)が市場のシェアの大半を独占することになります。
そして何か大きな問題が起きない限り、この状況が変わることはありません。
つまり、これから商品を開発するにあたって、同じ市場で「いかに役に立つか?」を追い求めてもシェアを広げることは難しいでしょう。
その一方で「意味がある」商品は利便性よりも趣味趣向によって選ばれます。
その人にとって何らかの意味を見出すことができる商品であれば、購入または利用していただけますし、時にはどんなに高価であっても、どんなに待たされても、どんなに役に立たなくても、それを選ぶ意味が勝っていれば、お客様h購入や利用を決定します。
例えば、私が昔から愛飲しているミネラルウォーターのボルヴィック(Volvic)は、他のミネラルウォーターに比べて価格もやや高く、容量も500ml(最近では600mlが主流?)ですが、今も変わらず愛飲しています。※ 誠に残念ながら2020年をもって販売終了となります
なぜならボルヴィックが好きだから。
もっと言うと、ボルヴィックのファンだから。
まろやかな口当たりをはじめ、広めの飲み口やボトルのデザインが私好みということもありますが、私が好んでボルヴィックを選ぶ理由は、ボルヴィックの背景にあるストーリーに心から共感し、応援したいと思っているからに他なりません。
ボルヴィックが採水されるフランスのオーヴェルニュ地方には「ボルヴィック村」があり、古くから村の人々によって採水地を含む周辺の環境が守られてきました。
今でも水源地周辺は4,000ヘクタール(東京ドームが約850個分)にわたって厳重に管理され、ボルヴィック社は水源地がまたがる4市の地元自治体や環境保護委員会とともに、自然環境保護活動を続けています。
日本よりも厳しい基準をクリアしているだけでなく、一切のろ過や殺菌を行わずに、自然のまま飲むことができる水が、古くから村の住人によって守られ、今もその活動が続いているのです。
ちなみにEU諸国におけるナチュラルミネラルウォーターは、地下水源があらゆる汚染から完全に隔離され保護されていることや、処理が一切行われず自然のままであることが基準となっていますが、日本では周辺の環境保護は義務付けられておらず、通常は殺菌処理が施されています。
もし日本で同じ基準を満たそうとすれば、採水地の周辺住民の協力を得るところから始めなければなりませんが、おそらくそんな面倒なことをする会社は現れないでしょう。
ボルヴィック村の人にとって自然環境を守ることは当たり前であり、義務でもなければ上司から指示されて行なっているわけでもありません。
そんな村人たちが守り続けてきた水を、百円足らずで飲めるだなんて…。
ぜひこの先も守り続けて欲しいですし、ボルヴィックを飲むことで少しでも貢献できればと思っています。※ ほんとうに残念でなりませんが、日本国内での販売は2020年をもって終了となります。
上記の理由から、私にとってのミネラルウオーターはボルヴィックの「1択」となり、ボルヴィックを選ぶことは私にとって「意味がある」わけです。
物が溢れているこの時代に、「役に立つ」商品で一番になるのは極めて難しい。
しかし「意味がある」商品であれば1番を目指す必要はありません。
そして特定のお客様を捉えて離さない、長く売れ続ける商品に成長する可能性を十分に秘めています。
「意味がある」商品を作ることは簡単ではありませんが、商品を育てていくという考え方を持って取り組むならば、あるいは未来にバトンを渡すことができる商品を作るという信念を持ち続けるならば、時代が変わってもなお、大きな成果をもたらし続けるでしょう。
「問題解決」ではなく「問題の提起」
新たな価値を創造する3つの未来視点。
ふたつ目は「問題の提起」です。
「トラブル解消や原状回復」「問題解決や原因究明」「不快や不便を取り除く」といった、今すでにある問題や課題を解決に導く商品ではなく、まだ誰も気づいていない問題を提起して、それを解決へと導く商品を開発するという視点です。
私は戦後を知らない世代なので、リアルに語ることはできませんが、洗濯機や掃除機、テレビや冷蔵庫が各家庭に普及していなかった時代から今日に至るまで、数え切れないほど多くの問題が解決・改善されてきました。
先人の努力によってますます便利で快適になった今日において、もっと便利で快適にという視点で商品開発を続けると、テレビやエアコンのリモコンを代表するように、必要のない機能や使わないボタンが増えるだけで、お客様に心からご満足いただくことは難しいのではないか?と感じています。
よくよく考えてみると、テレビに求める機能としては、チャンネルや入力切替ができる必要最低限のボタンと、そこそこ美しい画質と音声があればいいわけで、あとは画面の大きさやデザイン、価格などで判断する方が大半かと思います。
エアコンにしても、お部屋の環境に適した冷暖房機能をはじめ、風向きや風量の調整、除湿やタイマーなどがあれば、あとはお部屋の大きさやデザイン、メンテナンスのしやすさや価格で決める人が多いのではないでしょうか。
最近ではスマートフォンを使って外出先から遠隔操作できる機能や、天気予報や操作履歴をAIが解析して最適な○△□…といった機能を搭載した機種もありますが、あくまで個人的な意見を言わせていただくと、「外出先から遠隔操作する必要ある?」「エアコンに人工知能?それ本当に必要ですか?」と思ってしまいます。(あるに越したことはありませんが、そのせいで価格が高くなるのはちょっと考えものかと…)
では、
これ以上機能を追加することは良くないのか?
ということになりますが、そんなことはありません。
お客様がまだ気付いていない問題を提起して、それを解消する機能を追加することができれば、そこに新たな需要が生まれます。
先ほどのエアコンの例で言いますと、シャープさんが開発した「プラズマクラスター」の技術がそれに該当するかもしれません。
プラズマクラスターのメカニズムについては、シャープさんの公式Webサイトにお任せするとして、なぜプラズマクラスターがこれほどまでに浸透したのか?
それは「自ら問題を提起して、自ら問題を解決した」からでしょう。
シャープさんの表現とは少々異なるかもしれませんが、要は
「お部屋の中の空気中にはカビ菌やウイルス、アレルギー物質が浮遊しているのをご存知ですか?」
と、お客様は気がついていないけど実はそこに問題があることを提起して、
「実はうちが作ったエアコンはそのカビ菌やウイルス、アレルギー物資の作用を抑えることができるんです。しかも、タバコの匂いや静電気も抑えちゃうんですよ」
と、その解決法を提示する。
それを聞いたお客様が風邪をひきやすい方だったり、アレルギーを持つお子様がいらっしゃったり、家族に喫煙者がいたり、静電気に敏感な方がいた場合、
「え、そうなの!」
「エアコンにそんな技術が搭載されているの?」
と、前のめりになるわけです。
すべてのお客様が反応するわけではありませんが、日頃からそのように感じていたお客様の心が大きく動かされることは想像に難くありません。
お客様がまだ気付いていない問題は、商品を開発する私たちも気付きにくい問題と言えます。
問題を見つけ出すことは簡単ではありませんが、過去の延長線上から商品開発を行うのではなく、
「これからのエアコンはどうあるべきか?」
「これからのテレビはどうあるべきか?」
という具合に発想を膨らませながら、未来のあるべき姿を思い描いてみると、そこに必ずヒントが隠されています。
問題を提起したときに、お客様から少なからず驚きや感嘆の声が聞けたらしめたもの。
「そんな商品が欲しかった」
と言っていただける確率はかなり高いでしょう。
「必要」ではなく「欲しくなる」もの
新たな価値を創造する3つの未来視点。
3つ目は「欲しくなる」です。
本来の目的を満たす商品や、単に必要な商品ではなく、それらの商品に
- 使う楽しさや所有する喜び
- 日常を変えるワクワクやドキドキ
- 安らぎや落ち着き
- 美しさ可愛さ、カッコよさ
などプラスした商品を提供する、という視点です。
「意味がある」「問題を提起」と多少は通じる部分もありますが、ここでいう「欲しくなる」は先に述べた二つの視点と比べると、
- 遊び心をプラスする
- コアなファンに響く
- ニッチな需要を満たす
という表現に近いものがあります。
取り立てて大きな意味は持たないし、顧客がまだ気付いていない問題を提起するわけでもないけど、
「ただ〇〇というだけで欲しくなった」
「今すぐ必要じゃないけど思わず買ってしまった」
という商品が、いわゆる「欲しくなる」商品です。
わかりやすい例で言いますと、「シャア専用」と名前が付いた数々の商品がそれに当たります。
分かる人には説明不要ですが、わからない人のためにご説明いたしますと、「シャア専用」とは「機動戦士ガンダム」というアニメに登場するメインキャラクター「シャア・アズナブル」が操る、赤(朱色?)をメインカラーとした専用の機体(モビルスーツ)のことを言います。(で、やたらと強くてカッコイイ)
シャア・アズナブルは主役のアムロ・レイを凌ぐほどカッコよく(私はアムロ派ですが)、機動戦士ガンダムをよく知る世代では赤いアイテムを指して、例えば真っ赤なスマホを手に取って「シャア専用や、カッコええやろ!」ということもあります(よね?)。
以上、なんとなく「シャア専用」についてご理解いただいたところで、本題に戻ります。
私が確認しただけでも、「シャア専用」と呼ばれる商品は、
- 体組成計
- ラジオアンテナ
- ポメラ
- Gショック(腕時計)
- MA-1のジャンパー
- 自転車用ヘルメット
- カップヌードル
- 手帳
- メンズビゲン(髪染め)
- 長財布
- 明治アーモンドチョコケース
- VISAカード
- 南海電車のラピート
- Tシャツ
- トヨタ・オーリス(車)
など数多く存在し、商品のジャンルを問いません。(すでに販売終了している商品も含む)
それら全ての商品が「シャア専用」を象徴するカラーやロゴマーク、あるいはシャアご本人やモビルスーツのイラストがデザインされており、シャア・アズナブルのファンならずとも、ガンダムファンであれば理性を忘れて思わず手にしたくなる(体験したくなる)衝動に駆られます。(ほぼすべての商品が「限定販売」「限定モデル」です。)
つまり買うかどうかは別として、「欲しくなる」わけです。
シャア・アズナブルは機動戦士ガンダムに登場するアニメのキャラクターではありますが、「シャア専用」という言葉は、彼が持つ世界観や彼の美学、彼の考え方や生き方、彼のセンスや美意識などを総じていう「形容詞」のようなものであり、「シャア専用」を求める人たちはそれに強く共感を示す人たちと言えるでしょう。
だから理屈抜きに「欲しくなる」。
「欲しくなる」商品を開発するためには、
「感情に訴えかける工夫や仕掛けをする」
「理屈抜きに欲しくなる理由を作る」
そして、カッコよさや美しさといった「美意識を追求する」ことが求められます。
「欲しくなる」という未来視点をわかりやすくお伝えするために「シャア専用」を例に挙げましたが、「シャア専用」ほど強烈なインパクトがなくても、いったん商品本来の目的や用途を脇に置いて、
「この商品に欲しくなる要素を加えるためにはどうすればいいか?」
をとことん考えてみると、意外ところに答えが見つかるかもしれません。
誤解を恐れず言わせていただくと、すべての商品やサービスは、ダサいよりもカッコイイ方がいいですし、汚いよりも美しい方がいい、平凡より面白い方がいい。
少なくとも、モノが溢れているこの時代において、売れる商品を生み出すためには、「欲しくなる」視点をプラスすることが、よりいっそう必要であると個人的には思っています。
まとめ
今回は、「これからの商品開発に最も必要なこと、必要な考え方は何か?」という問いに対する答えとして、3つの未来視点をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
忘れないようにもう一度おさらいしておきましょう。
3つの未来視点
- 「役に立つ」をいったん脇に置いて、「意味がある」商品を開発する
- 「今ある問題を解決する」のではなく、「自ら問題を提起し、解決する」
- 「必要」な商品はすでに飽和状態なので、「欲しくなる」商品を開発する
昭和から平成、そして令和にかけて、自身の持ち物や利用しているサービスが、日本製の商品やサービスから、外国のメーカーが開発した商品やサービスに少しずつ移行しているのは私だけでしょうか。
- 携帯電話はiPhone
- パソコンはiMac
- 掃除機はダイソン
- ネットショップはAmazon
- 毎日飲むミネラルウォーターはVolvic(ボルヴィック)
- 除菌はファブリーズ(P&Gジャパンですけど)
- 自転車はBD-1(ドイツ「Riese und Müller」社の折り畳み自転車)
- 愛犬の餌はヒルズのサイエンスダイエット(アメリカ)
- 登山靴はザンバラン(イタリア)
など、知らないうちに海外メーカーの商品や、海外で生まれたサービスを利用していることにあらためて気づかされます。
以前は外国の商品に対して
- 機能性が悪く、壊れやすい
- わかりにくく、デザインがイマイチ
- 修理ができず、部品も取り寄せ
- カスタマーセンターがない
といったマイナスのイメージを持っていましたが、最近ではそのようなこともありません。
むしろ、
- 世界トップクラスの技術が使われている
- 余計な機能がなく洗練されている
- デザインがシンプルでスタイリッシュ
- 保証やカスタマーサービスが充実している
といったプラスの印象を持つことも多々あり、好んで海外製品を選ぶこともあるほどです。
ではなぜ「Made in Japan」ではなく、海外メーカーの商品を抵抗なく選ぶようになったのか?
好んで利用するようになったのか?
多くの消費者に選ばれるようになったのか?
もちろん前述した理由も多分にありますが、その答えは「新たな価値を創造する3つの未来視点」が備わっていたからと言えなくもありません。
自分にとって意味がある商品だったり、今まで気づかなかった問題に気づかせてくれたり、思わず欲しくなるデザインや機能美だったり…。
みなさんの身の回りにある商品はいかがですか?どんな理由でその商品を選びましたか?
自分がなぜこの商品を選んだのか?を考えてみると、新たな発見があるかもしれませんね。
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました (^.^)
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