「商品開発に初めてチャレンジする際、最も重視すべきことは何か?」
「商品開発の基礎となる考え方が知りたい」
というあなたに、今回は、
- 3つの顧客視点:何のために? 誰のために? いつまでに?
- 3つの開発視点:コンセプト マーケット ターゲット
ついて解説します。
これからお話しする内容は、私がこれまでに数々の商品やサービスを開発してきた経験と、多くの書籍から得た知識や知恵をもとに、それらを融合して導き出した「商品開発の基礎」となる考え方です。
はじめて商品開発にチャレンジされる方には参考になると思います。
そして、既にいくつかの商品開発に携わったことがある方は、参考になる部分があれば、今後の開発に活かしていただければ幸いです。
それでは早速まいりましょう!
商品開発の基礎を成す考え方
「顧客視点」「開発視点」という2種類の視点は、商品開発の基礎を成す考え方です。
お客様の視点から商品を考えること、そして、自社の視点から商品を考えること。
どちらの視点が欠けても、いい商品を作ることはできません。
「そんなことは百も承知」「今さらわかりきったことを…」と思われるかもしれませんが、商品開発が進むにつれて、次から次に発生する問題や、目の前に立ちはだかる多くの課題と向き合う中で、いつの間にか本来の目的を見失ってしまうことが往々にしてあります。
そんな時こそ、商品開発の基礎を成す「顧客視点」「開発視点」を再び思い起こして、あらためて問題や課題に取り組んでいただきたいのです。
いい商品とは、使う人に嬉しさや楽しさを提供する、喜びや幸せを感じさせる商品です。
いい商品を開発するために、「くどい」「今さら」と思われるかもしれませんが、商品開発の基礎となる考え方を再確認しておくことで、道に迷うことが少なくなります。
それでは、それぞれの視点を詳しく見ていきましょう。
顧客視点とは
顧客視点とは、わかりやすく言うと「お客様の視点」です。
顧客視点には「何のために?」「誰のために?」「いつまでに?」という3つの視点があり、商品開発を行う際は、これらの視点からものごとを考え、判断する必要があります。
とりわけ最初の2つ「何のために?」「誰のために?」は特に重要なので、開発メンバー内で時間をかけてじっくりと議論し、明文化することをオススメします。
「何のために?」「誰のために?」は、文章に起こすだけでなく、常に見えるような場所に掲示したり、時おり確かめ合うなどして、いつどこで誰に聞かれても即答できるようにしておきましょう。
それでは3つの顧客視点について、それぞれ解説いたします。
何のために開発する?
その商品はどんな問題を解決し、どんな喜びを与えることができるのか?
チームビルディングの進め方を5つのステップで解説!の記事でもお話ししましたが、
まず初めに会社のビジョンやミッションがあり、
それを汲んだ「商品開発の目的やゴール」がありますから、
「何のために商品を開発するのか?」は、
「商品開発の目的やゴール」をさらに具体的に表現した内容となります。
別の言い方をすると、これから開発する商品の「存在価値」、あるいは「開発する理由」といったところでしょうか。
例えば化粧品やハンドクリームを作っている会社が、以下のビジョンを掲げていたとしましょう。
「大切な人との触れ合いが、大切な思い出に変わるように」
それを受けて、会社のビジョンを実現するために設定した商品開発の目的が
「子供が手を繋ぎたくなる、頬ずりしたくなる手肌をすべてのお母さんにお届けする」
だとします。
それを受けて「何のために商品を開発するのか?」という問いに対する答えを考えると
「子供とのスキンシップを増やす」
「お母さん特有の手荒れを防ぐ」
「子供と一緒に使えるクリームを開発する」
といった、より具体的な目的に落とし込むことができます。
つまり
「会社のビジョン」→「商品開発の大きな目的」→「個々の商品開発の目的」
となるわけです。
たとえ1種類しか商品開発しない場合であっても、まずは「商品開発の大きな目的」を決めてから、実際に開発する商品の目的を掘り下げて考えると、お客様への訴求力が高まります。
少々面倒ではありますが、この手順を踏んで「何のために?」を追求してみましょう。
誰のために開発する?
その商品は誰のために開発するのか?
どんな人たちまでカバーするのか?
「誰のために開発するのか?」を明確にしておくと、原料や素材を選ぶとき、機能性や実用性を考えるときに判断を誤ることが少なくなります。
先ほどの化粧品やハンドクリームを作っている会社を例にご説明しましょう。
商品開発の大きな目的が
「子供が手を繋ぎたくなる、頬ずりしたくなる手肌をすべてのお母さんにお届けする」
でしたから、
「誰のために?」の問いに対する答えは
「子育て中のお母さんとその子供のために」
となります。
さらに深掘りして、
- 子育て中のお母さんはどの年代が多いのか?
- 専業主婦か、それとも共働きか?
- 子供は何歳までを想定しているのか?
- 男女別に考えるのか?それとも性別を無視するのか?
など、より具体的に「誰のために?」を追求することで、
- どのような成分を主原料として、どんな香りにするか?
- どんな容器に入れて、どれくらいの量を入れるか?
- パッケージのデザインや販促プロモーションの方法は?
といった、その後の開発を進める上での焦点が定まります。
ここで気をつけていただきたいことは、あくまで「具体的に設定」することであって、決して「極端に絞り込む」ことではないということです。
例えばお母さんの年代や子供の年齢を幅広く決めておいて、
「子供とのスキンシップのきっかけを作りたいお母さん」
「娘とお洒落を楽しみたいお母さん」
といった特定のニーズやウォンツを具体的に決めるだけでもかまいません。
要は「誰のために?」の具体的な答えであればOKです。
いつまでに開発する?
その商品をいつまでに届けたいのか?
発売するタイミングはいつなのか?
先に挙げた「何のために?」「誰のために?」と比べると、それほど重要ではありませんが、扱っている商品や提供するサービスによっては発売するタイミング次第で話題に上がったり、時期を逃すと見向きもされないことがあります。
先ほどの例で言いますと、子育て中のお母さんとその子供が一緒に使えるハンドクリームを発売するのであれば、空気が乾燥する秋に発売する方がいいでしょうし、季節に関係なくお風呂上がりに使うボディクリームやボディローションであれば、時期によって多少の浮き沈みはあるかもしれませんが、発売するタイミングをさほど気にする必要はないかもしれません。(ハンドクリームやボディクリームを販売したことがないので想像で言ってますが、多分合ってると思います。)
発売するタイミングに関して個人的な意見を言わせていただくと、
「商品(プロダクツ)は焦らず急がず」「サービスはできるだけ早く」
がベストだと思っています。
というのも、商品は流通した後に不良品や不具合が発覚すると回収することになりますが、サービスは何らかの不具合が生じても、お客様に提供する前であれば修正することが可能だからです。
これは印刷物とWebサイトの関係とよく似ていて、印刷物は刷り上がった後に間違いが発覚すると、刷り直しとなりますが、Webサイトに同様の間違いが見つかってもすぐに修正できます。
とにもかくにも、商品開発は「答えのない問い」に向き合うことになりますから、期限がないといつまで経っても決められない…前に進まない…というケースもしばしば起こりえますので、大まかであっても期限は決めておいた方がいいでしょう。
開発視点とは
開発視点とは、わかりやすく言うと「自社の視点」です。
開発視点には「コンセプト」「マーケット」「ターゲット」という3つの視点があります。
端的に言うと、「どんな商品を、どこで、どのように、誰に販売するのか?」という事ですね。
それではひとつずつ詳しく見ていきましょう。
商品のコンセプトは?
コンセプトとは、考え方や価値観を表す「枠組み」です。
コンセプトを定めて商品開発をするということは、ある考え方や価値観をもとにした生活様式やスタイル、特定の趣味趣向や場面を、お客様が目で見てわかるように表現すること、あるいは、考え方や価値観が伝わるような雰囲気や空気感を出すような商品を作ることを意味します。
ちょっとわかりにくいので、例を挙げてご説明しましょう。
例えば都会のシティホテルにおいて、
「ハワイの豪華リゾートホテルで優雅に過ごすひと時」
をコンセプトにした宿泊プラン(商品)を新たに開発する場合。
上記のコンセプトをしっかりとお客様に伝えるためには
- どんなお部屋にするのか?
- どんなお料理を出すのか?
- どんなアメニティを用意すればいいのか?
などを考えて、お客様に心からご満足いただけるような商品(宿泊プラン)を考えます。
開発する商品のコンセプトが明確であればあるほど、原料や素材、価格帯やデザインといった商品の仕様や方向性が定まってきますから、自ずと開発するスピードも早くなりますし、開発する商品のイメージをメンバー間で共有しやすいというメリットもあります。
商品のマーケットは?
マーケットとは、商品を売り出す「市場」や「販路」です。
- どんな業界に売り出すのか?
- どこのエリアで販売するのか?
- 消費者に直販するのか?
- 代理店や卸販売をメインとするのか?
- インターネットを介して販売するのか?
- 実店舗を構えるのか?
などなど、商品のマーケットを定めるということは、
「どこでどのように売るのか?を想定すること」
に他なりません。
大抵は開発する商品によって決まっていますが、これまでの固定概念を取り払って考えると、新たな市場や販路が見えてくることがあります。
それを実証する代表的な例はネットショップの横綱「Amazon」でしょう。
ご存知のようにAmazonは、これまで実店舗に足を運ばなければ買えなかったあらゆる商品を、インターネットを通じて買えるようにしました。
つまり「販路」を変えたわけです。
そのインパクトたるや…説明不要ですよね。
Amazonの他にも
- 農協を通じてお米を販売していた農家が、消費者に直接ネット販売する
- スーパーでしか買えなかった生鮮食品をネットからご注文いただいて自宅まで配達する
など、売り先や販路を変えることで成功した事例は多々あります。
真新しい商品でなくても「どこでどのように売るのか?」をとことん考えて、これまでの常識を覆すような売り先や売り方に変えるだけでも大ヒットする可能性は十分あるのではないでしょうか。
商品のターゲットは?
ターゲットとは販売する相手や人物像、あるいは、こちらが定めた商品コンセプトを好む対象です。
「3つの顧客視点」で解説した「誰のために?」と同じなのでは?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、「ターゲット」は少しニュアンスが異なります。
例えば学習塾で新たに「難関校入試対策特別コース」というプラン(商品)を新たに開発する場合、「誰のために?」は当然ながら「塾に通う生徒さんのため」となりますが、「ターゲット」は塾に通わせる親御さんです。
この違いお分かりいただけますでしょうか?
つまり、商品を提供する相手と購入する相手が、必ずしも同一人物とは限りません。
塾に通うのはお子様ですが、通わせることを決めるのはご両親ですから、「誰のために?」と「ターゲット」は個別に考える必要があります。
「ターゲットを定める」ということは、「誰に訴求すると商品を買っていただける可能性が最も高いか?」を追求することであり、ターゲットを上手に設定することで商品開発の成果が大きく変わることも珍しくありません。
まとめ
今回は、商品開発の基礎を成す考え方として、顧客視点と開発視点について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
忘れないように、もう一度おさらいしておきましょう。
商品開発の基礎を成す考え方
- 3つの顧客視点:何のために? 誰のために? いつまでに?
- 3つの開発視点:コンセプト マーケット ターゲット
「顧客視点」「開発視点」は商品開発を行う上で必須とされていますが、実はもうひとつ知っておいていただきたい視点があります。
それは新たな価値を創造するときに欠かせない「未来視点」です。
「未来視点」はこれからの時代に最も必要とされる商品開発の新たな視点であると同時に、この視点の有無によって、集客活動や販促プロモーションの効果が大きく変わってきます。
なお「未来視点」については以下の記事をご覧くださいませ。
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました (^.^)
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