「経営者に求められる能力とは?」
「会社経営における主な課題とは?」
「経営者が必ず学ぶべきこととは?」
というあなたに、今回は
- 経営者に必要な4つの能力
- 会社経営の3つの課題
について解説いたします。
例えば、プログラマーの方が、パソコンを使って便利なシステムを構築するとき、プログラミングのスキルを持っていれば、表向きはシステムを構築できますが、実はそれだけでは足りません。
プログラミングのスキルを持っていれば、一般的にはプログラマーやシステムエンジニアの肩書きを手にすることはできます。
しかし、高度なシステムを構築する「プロフェッショナル」と呼ばれる人は、プログラミングのスキルだけでなく、システムを利用する人間の行動パターや行動心理を読み解いて、わかりやすくて使いやすい、そして、一切のストレスを感じさせないシステムを構築します。
経営者も同様に、会社経営のトップに位置し、社内における最高意思決定者となれば「経営者」と呼ぶことはできますが、会社経営の目的を果たし、健全な会社経営を行い、会社を永続させるためには、いくつかの能力が欠かせません。
そして、それらの能力を身につけていれば、経営者が会社経営の課題に直面した時も、スムーズに解決することができます。
では、経営者が身につけるべき能力とは、一体どんな能力なのか?
早速見ていきましょう。
経営者に必要な能力
経営者に必要な能力とは?
このシンプルな問いを、より具体的な質問に分解すると、
- 経営者が、健全な会社経営を行うために、必要な能力は何か?
- 経営者が、会社経営の目的を果たすために、必要な能力は何か?
となります。
では、「健全な会社経営」とは、「会社経営の目的」とは、一体どのようなものか?
健全な会社経営とは、
経営者がいちいち細かい指示を出さずとも、社員が自分の頭で考え、自らの意思で成すべきことを為し、毎年少しずつ業績がアップするような状態を指します。
そして、会社経営の目的とは、
社員を幸せにすることによって間接的に社会に貢献することであり、お客様に価値ある商品をお届けすることで、より多くの楽しさや喜びを感じていただくことに他なりません。
上記を踏まえた上で、あらためて
経営者に必要な能力は何か?
と聞かれたら、以下の4つの能力に絞られます。
経営者に必要な4つの能力
- 社員のモチベーションを高め、人間的な成長を促す能力
- 共感を生む会社の理念を作り、全社員に浸透させる能力
- 未来のあるべき姿を示して、新たな事業を構想する能力
- 会社が成長し続けるストーリーを考えて、実行する能力
それでは、ひとつずつ詳しくみていきましょう。
社員のモチベーションを高める能力
経営者に必要な4つの能力のひとつ目は、
「社員のモチベーションを高め、人間的な成長を促す能力」です。
会社が人の集合体であることを考えると、働く人のモチベーションを上げることは、生産性を上げることに直結します。
長く仕事を続けていると、当然ながら、うまくいくことや期待する成果をあげることもあります。
しかし、ほとんどの人は、成功すること以上に失敗することやうまくいかないことの方が断然多いため、社員の仕事に対する「やる気」や「情熱」を維持することは、決して簡単ではありません。
そのような状況下で、社員のモチベーションを高めるためには、
- 答えのない問いに正対し、チャレンジし続ける精神力
- 成功につながる「小さなきっかけ」を見つける洞察力
- 自分がわからないことやできないことを認める謙虚さ
など、人間的な成長につながる要素が必要不可欠です。
経営者が、仕事に対する姿勢や取り組み方、考え方や心の持ち方を日頃から本気で伝えていたなら、社員たちは高いモチベーションを維持しながら、日々の仕事と向き合うことができます。
そのため、経営者にとって
「社員のモチベーションを高め、人間的な成長を促す能力」
は絶対に欠かせません。
経営者にとって一番大切な能力は、社員のモチベーションを高める能力だと思います。
社員のモチベーションが高く維持されていれば、会社は適度なスピードで成長しながら永続していくことができます。
出典:塚越 寛(2019)『末広がりのいい会社をつくる ~人も社会も幸せになる年輪経営~』サンクチュアリ出版.
会社の理念を作り、浸透させる能力
経営者に必要な4つの能力の2つ目は、
「共感を生む会社の理念を作り、全社員に浸透させる能力」です。
会社が大切にしている考え方や、あるべき姿を明確にしないまま、会社経営は成り立ちません。
会社が目指すべき未来を描くことなく、会社の使命を定めることなく会社経営を行うことは、地図を持たずに山を登ることと同じです。
そして、会社の理念が社員の共感を得られず、社内に浸透させることができなければ、社員の気持ちを束ねることはおろか、最高のパフォーマンスを発揮することは不可能と言っていいでしょう。
経営者は、理念の重要性を理解するだけでは足りません。
経営者は、「健全な会社経営」の意味を理解し、「会社経営の目的」をしっかり見据えて、自分に正直に、自分が信じるものを自分の言葉で表現し、多くの人々から共感を得る会社の理念を掲げる必要があります。
経営者自らが本気で考えた「本物の理念」であれば、美辞麗句は一切不要。
経営者自らが掲げた、偽りのない理念を自分の言葉で語るなら、社員は耳を傾け、その一語一句を胸に刻むことでしょう。
上記のことからも、経営者にとって
「共感を生む会社の理念を作り、全社員に浸透させる能力」
は絶対に欠かせません。
経営理念や社是を全社的に共有していることが、会社経営の基本です。
これを欠いてしまっては、会社全体としてのパワーが生まれません。
理念や社是が社内にしっかり浸透していてこそ、社員に戦略が理解され、戦術も生きてくるのです。
出典:塚越 寛(2019)『末広がりのいい会社をつくる ~人も社会も幸せになる年輪経営~』サンクチュアリ出版.
未来を描いて、事業を構想する能力
経営者に必要な4つの能力の3つ目は、
「未来のあるべき姿を示して、新たな事業を構想する能力」です。
会社の未来を正確に予測することはできませんが、
「数年後、どうなりたいのか?」
「数十年後、どうあるべきか?」
と、未来のあるべき姿を思い描くことはできます。
過去の延長線上にある未来ではなく、これから歩む道のりの先にある「なりたい姿」「あるべき姿」を描き、その実現に向けて経営者自らが新たな事業を構想し、わかりやすく丁寧に、自分の言葉で社員に伝えるのです。
会社経営は「永続すること」が極めて重要ですから、永続するためには今手掛けている好調な事業だけに目を向けるのではなく、時代の変化を敏感にキャッチして、常に次の一手を考えなければなりません。
ただし、新たに考案した事業がすべてうまくいくとは限りません。
それを見越して、あらかじめひとつではなく複数の事業を立ち上げ、芽が出るまで辛抱強く継続することや、状況に応じて臨機応変に方向転換すること、そして、時には撤退する決断を下すことも必要です。
経営者が描く会社の未来の姿が、社員や顧客の幸せにつながるものであれば、大輪の花を咲かせる事業がきっと生まれてくるに違いありません。
会社の永続を誓う経営者にとって
「未来のあるべき姿を示して、新たな事業を構想する能力」
は必要不可欠と言えるでしょう。
会社というのは、終わりのない旅を続ける列車のようなものです。
走るべき線路がなければ新しい線路を敷くことも、経営者の任務です。
会社が永続していくために、どの方向へ、どのようなルートで線路を敷くべきなのかを見極める手腕、すなわち将来の変化を予測し、必要な種まきをおこなう事業構想力が問われます。
出典:塚越 寛(2019)『末広がりのいい会社をつくる ~人も社会も幸せになる年輪経営~』サンクチュアリ出版.
会社の成長ストーリーを考える能力
経営者に必要な4つの能力の4つ目は、
「会社が成長し続けるストーリーを考えて、実行する能力」です。
ビジネス環境の変化が激しい今日において、会社が成功し続けることは極めて困難と言えますが、成長し続けることはできます。
会社の成長とは、社員の成長であり、会社の信頼を高めることに他なりません。
会社が規模の拡大や利益の増大を優先してしまうと、高い目標を掲げざるを得なくなり、その結果、社員に余計なストレスをかけることになります。
対照的に、会社が社員の人間的成長をはじめ、お客様や取引先、ひいては社会からの信頼を得ることを目的とし、関わるすべての人たちが幸せになるストーリを考えて実行したなら、社員はストレを抱えることなく、高いモチベーションを維持したまま、意欲的に仕事に励むことでしょう。
「どうすればお客様に喜んでもらえるのか?」
「どうすればお取引先に満足していただけるだろう?」
「どうすれば地域社会に貢献できるだろうか?」
そんなことを考えながら、気持ちを込めて丁寧に仕事をすると、相手はこちらの思いを受け止めてくれるだけでなく、時に感謝の意を示し、商品や会社のこと、社員や経営者に対して今まで以上に厚い信頼を寄せてくれます。
信頼はお金で買えるものではありませんが、不思議なことに、信頼は、結果として売上や利益というカタチで、会社の業績アップに貢献してくれます。
経営者は、売上や利益を上げることを目的とした戦略を考える以前に、社員の成長や会社の信頼得るための壮大なストーリーを考えることに、多くの時間を使うべきです。
「会社が成長し続けるストーリーを考えて、実行する能力」
は、結果として、会社に利益をもたらしてくれるに違いありません。
利益とは本来、「出す」ものではなく「出る」ものだと思います。
私はかねてから「利益は健全な事業活動をおこなった結果として生じるウンチのようなもの」と考えてきました。
日常生活でバランスのよい食事をとり、適度な運動や睡眠を維持していると、規則正しくウンチが出ます。
これが健康な人の生活リズムです。
利益も同じことだと思います。
出典:塚越 寛(2019)『末広がりのいい会社をつくる ~人も社会も幸せになる年輪経営~』サンクチュアリ出版.
会社経営の課題
会社経営の課題は何か?
一般的には、
- 優秀な人材の獲得や育成
- 生産性の向上やコスト低減
- 新事業や研究開発への投資
- 営業力や販売力の増強
- 商品や会社のブランディング
などが挙げられますが、大別すると、会社経営の課題は以下の3つに絞られます。
会社経営の3つの課題
- 会社の理念の浸透
- 社員の人間的成長
- 売れる仕組み構築
では、なぜ上記の3種類に絞られるのか?
ひとつずつ、その理由を解き明かしていきましょう。
会社の理念の浸透
会社経営の課題のひとつ目は、「会社の理念の浸透」です。
会社の理念を社員に浸透させるということは、管理体制からの脱却を意味します。
つまり、会社が大切にしたい考え方や価値観、会社が目指す未来や行うべきことが社員に深く浸透していたなら、社員は自分の頭で考え、スピーディーかつ能動的に動くようになります。
そのような会社は、上司からの指示をただこなすだけの会社とは異なり、日頃から社員の間で活発な意見交換が行われ、自由な発想が飛び交うため、常識を覆す画期的なアイデアが生まれることも珍しくありません。
会社経営の課題のひとつに「管理=マネジメント」を挙げる方もいらっしゃいますが、
詰まるところ、
- 管理しなくてもいい会社
- 自走する組織(会社)
を作り上げることが、会社経営の理想のカタチです。
管理には多くの時間と労力を費やさなければなりませんし、管理がエスカレートすると、社員が窮屈に感じて、仕事のパフォーマンスにも影響します。
加えて、新たな価値を創造して、「イノベーション」と呼ばれるような大きなインパクトを与える画期的な商品や仕組みは、管理から生まれることはほぼありません。
そう考えると、
「会社の理念の浸透」は、会社経営の大きな課題と言えるのではないでしょうか。
管理は大成功とまったく反対です。
大成功するにはブレークスルーしないといけないのだから、管理から成功は生まれないですね。
だから、人を管理するのも嫌いです。
いい会社というのはコンピュータの基本言語と同じですよ。
OSのような基本的な精神や基本原理を全員が理解していて、その上に1人ひとりがアプリケーションのように、自分の良識に従って経営者として判断する。
そういう組織が1番だと思います。
(ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長 柳井正氏のコメントを抜粋)
出典:楠木建(2014)『「好き嫌い」と経営』東洋経済新報社.
社員の人間的成長
会社経営の課題の2つ目は、「社員の人間的成長」です。
会社が人の集合体であることを考えると、人を育てることが会社を育てることにつながり、ひいては業績アップにつながることは容易に想像できます。
しかしながら、売上アップや利益増大を目標にしている企業は数多くあれど、人の成長を目標にしている会社は少ないのではないでしょうか。
人間的成長を数値で表すことはできませんから、それも仕方のないことかもしれませんが、社員の成長がモチベーションアップにつながり、仕事のパフォーマンス向上に寄与し、結果として、生産性の向上につながることは、経営者であれば、心に留めておく必要があります。
とりわけ、中小企業や小さい会社は、優秀な人材を確保するために多額の予算を費やすのであれば、優秀な人材を育てるために、職業人としてのあるべき姿を伝え、人間教育に多くの時間を使う方がよほど効果的です。
機会はスペック以上のパフォーマンスを出すことはできませんが、人間は年を重ねるごとに体力的には衰えても、精神的にはどこまでも成長することができます。
そう考えると、
「社員の人間的成長」を会社経営の大きな課題に据えても、何ら不思議ではありません。
人間的成長よりもスキルアップを優先する人が多いようです。
スキルが高まれば、会社の売上には寄与できるでしょう。
しかしそれだけでは、長期的に見たときに、どこかでほころびが出てきます。
会社の永続的な成長をめざすなら、経営者は社員の人間的成長にこそ力を注ぐべきだと思います。
出典:塚越 寛(2019)『末広がりのいい会社をつくる ~人も社会も幸せになる年輪経営~』サンクチュアリ出版.
売れる仕組み構築
会社経営の課題の3つ目は、「売れる仕組みの構築」です。
商品やサービスが自動的に売れる仕組みを作ることができなければ、人件費をはじめ、広告や販促に費やすコストを下げることはできません。
たとえ売上が上がったとしても、それにつれてコストも増加するため、社員への還元はもとより、職場環境や生産設備、あるいは研究開発に投資する資金を十分に確保することは難しいでしょう。
売れる仕組みを作るためには、お客様を主人公としたストーリーが必要不可欠です。
売れる仕組みを構築することは簡単ではありませんが、お客様の心の動きに注視して、商品との出会いから購入、そして、ファンになるまでのストーリーを描くことができれば、営業や販売に時間と労力をかけることなく、売上は次第に右肩上がりへと移行します。
そう考えると、
「売れる仕組みの構築」は、優先すべき会社経営の課題と言えそうです。
生産とマーケティングの間に、何ら対立はない。
ターゲットとする顧客に、他社が提供できないものを提供するか、製品・サービス・価格の総合的な価値が他社よりも高ければ、マーケティングに成功するというだけの話である。
出典:リチャード・コッチ(2011)『新版 人生を変える80対20の法則』(仁平和夫/高橋裕子訳)阪急コミュニケーションズ.
まとめ
今回は、
- 経営者に必要な4つの能力
- 会社経営の3つの課題
について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
忘れないように、もう一度おさらいしておきましょう。
経営者に必要な4つの能力
- 社員のモチベーションを高め、人間的な成長を促す能力
- 共感を生む会社の理念を作り、全社員に浸透させる能力
- 未来のあるべき姿を示して、新たな事業を構想する能力
- 会社が成長し続けるストーリーを考えて、実行する能力
会社経営の3つの課題
- 会社の理念の浸透
- 社員の人間的成長
- 売れる仕組み構築
能力とは少しニュアンスが異なりますが、周りの人から尊敬される、信頼される経営者ほど、「謙虚さ」を持ち合わせていて、何事にもひたむきで勤勉であると感じるのは、私だけでしょうか。
対照的に、
- いつも上から目線で話をする
- 偉そうな言葉や態度をとる
- 気分屋で、すぐ感情的になる
といった経営者は、
業績が上向きの時に周りの人からチヤホヤされることはあっても、好調な時期は長く続かず、業績が右肩下がりになるにつれて、一人…また一人…と、次々に人が離れていきます。
人が自然に集まってくる経営者もいれば、残念ながら、上記のように「カネの切れ目が縁の切れ目」と言わんばかりに、人がどんどん離れていく経営者もいらっしゃいます。
会社が人の集合体であることを考えると、経営者の魅力こそが、会社経営の根底を支えていると言っても過言ではありません。
経営者という肩書きを手に入れたとしても、おごらず、威張らず、放漫になることなく、謙虚さをもって経営者の道をひたむきに歩き続ける…。
それでこそ「本物の経営者」と言えるのかもしれませんね。
私が大嫌いなのは、偉そうにする人です。
本当に偉い人は、偉そうにしない。
中途半端な人が偉そうにする。
大企業でも、組織とかポジションとか、何かに乗っかっているだけの人なんかですかね。
しかし、自分の力で何かをやってきたすごい人は、ちっとも偉そうにしない。
それは、そういう人は「自分はまだ、たいしたことない」と思っているからです。
まだまだ上をめざしているので、その人の尺度では「今の自分」は、ちっとも偉くない。
(インテグラル代表取締役パートナー 佐山展生 氏のコメントを抜粋)
出典:楠木建(2014)『「好き嫌い」と経営』東洋経済新報社.
最後にもうひとつ。
「日々の業務に追われて、重要な仕事に費やす時間が足りない…」
「経営戦略や人事、新事業について専門分野の人に相談したい…」
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ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただき、ほんとうにありがとうございました (^.^)