「商品企画の経験が少なく、進め方がいまいちわからない」
「商品企画と商品開発の意味が曖昧なので、違いを知りたい」
というあなたに、今回は
- 商品企画の進め方がわかる5つのステップをご紹介
- 商品企画と商品開発の違いをわかりやすく解説
いたします。
卸売業や下請けの工場などが自社商品を開発する場合、まずは商品を企画することになりますが、安易に他社の商品を真似てみても、なかなか成果を上げることはできません。
正直なところ、商品企画は回数を重ねるごとに進め方やコツがわかってきます。
しかし、商品企画に初めてチャレンジする方や、商品企画の経験が少ない方は、進め方がわかっていれば安心できますし、失敗が少なくて済むことも事実です。
すでに商品企画に携わっている方も、新たな発見があるかもしれませんので、ぜひご一読いただければうれしく思います。
それでは早速みていきましょう。
商品企画の進め方 5ステップ
商品企画の進め方を、5つのステップに分けてご紹介します。
商品企画の進め方 5ステップ
- 自社の強みと弱みを確認する
- やらないことを明確にする
- 過去の経験を最大限に活かす
- 業界の常識や当たり前を疑う
- 商品のカテゴリーを意識する
ご存知の通り、世の中にはいろんな業界や業種があり、数え切れないほどの商品やサービスが存在し、商品企画の進め方や考え方もさまざまです。
これからご紹介する「商品企画の進め方」が、全ての商品を企画する際に当てはまるわけではありませんが、中小企業や小さな会社が限られた予算と人員の中で商品企画を行うときは、ぜひご参考にしていただきたいと思います。
なぜなら、「商品企画の進め方 5ステップ」は、私が実際に中小企業で自社商品を企画・開発してきた経験から、再現性が高いと思われるコツやヒントのみを抽出した方法だからです。
自社の強みと弱みを商品企画にどう活かすか?
どのようにしてアイデアを商品かにつなげるか?
既成概念に囚われない斬新な商品を生み出すコツは?
などなど、ついつい煮詰まってしまいがちな商品企画を考える上での具体的かつ実用的なアドバイスを、自身がネット印刷会社で働いていた頃に企画・開発した「台紙付き名入れペン」を例にお伝えします。
それでは早速見ていきましょう。
自社の強みと弱みを確認する
商品企画の進め方、最初のステップは「自社の強みと弱みを確認する」です。
何が得意で何が苦手なのか?を知ることは、商品企画を行う上で必須です。
得意なことはそのまま「他社との差別化を図る自社独自の強み」となる可能性が高いことから、商品企画に活かさない手はありません。
先に述べたとおり、私が実際に商品企画を手掛けた「台紙付き名入れペン」を例にご説明しましょう。
その前に、
「台紙付き名入れペンとは何ぞや?」
という方が大半かと思いますので簡単にご説明いたしますね。
まず「名入れペン」とは企業のノベルティやイベントの記念品として(無償で)配布される「社名やロゴマーク、イベント名などが軸やクリップに印字されたペン」のことを言います。
名入れペンは多くの場合そのまま配布されるか、あるいは透明のOPP袋に入れて配布されますが、「台紙付き名入れペン」は透明のOPP袋の中にフルカラーで印刷された台紙が入っています。
なぜ台紙を入れるのか?は後述するとして、ここでは「台紙付き名入れペン」は「台紙を入れる」というひと手間を加えた名入れペン、ということだけ覚えておいてください。
それではあらためて「自社の強みと弱みを再確認する」についてお話します。
まず初めに自社の強みと弱みですが、
強みは
- ネット印刷会社であること
- デザインができる(デザイナーがいる)こと
弱みは
- 自社内で名入れ印刷できないこと
- 名入れペンを扱った経験がないこと
といったところでしょうか。
「自社の強みを競合他社との差別化につなげるためにはどうすればいいか?」
ある時そんなことを考えながら名入れペンを手にじーっと眺めていると、
「名入れペンって見た目のインパクトに欠けるなぁ…」
「もっと目立たせたり企業のカラーを出せないものだろうか…」
と、ふと思ったのです。
するとひとつのアイデアが思い浮かびました。
「アイデアの神様が突然舞い降りてくる」とは、どうやらそれは本当のようです。
「自社の強みである印刷技術とデザインスキルを活かして、フルカラーで印刷したオリジナルデザインの台紙を入れることはできないか?」
「そうすることで見た目の印象もよくなるし、企業のコーポレートカラーをはっきり出せるし、他者との差別化にもつながるんじゃないか?」
私が予想した通り、台紙を入れることによって名入れペンの見栄えは一変!
誰が見てもインパクトある商品に生まれ変わったのです。
フルカラーの台紙はペンの軸に比べて、平面にデザインできるスペースが広いため、写真やロゴ、イラストなどを自由に配置することも可能ですし、裏面に広告や割引クーポンをつけることもできます。
結果的には筆記具メーカーさんや社内の皆様のご協力もあって、この「台紙を入れる」というアイデアは実現され、名入れペンの市場に新規参入にもかかわらず、徐々に多くの企業様から選ばれるようになりました。
自社で名入れすることができなかったため、短納期のご要望には対応することはできませんでしたが、その「弱み」を印刷技術とデザインという「強み」でカバーすることで、お客様に選ばれる明確な理由が出来上がった好例と言えるでしょう。
やらないことを明確にする
商品企画の進め方、次のステップは「やらないことを明確にする」です。
商品企画をする段階で「やらないこと」「やりたくないこと」を明確にして、その理由をメンバーや社内に共有しておくと、商品化する際に方向性がブレることが少なくなります。
名入れペンを手掛ける時に「絶対にやりたくない」、いや「絶対にやらない」と決めたことは
- 安売りをすること
- 人に依存した営業活動
- 取引メーカーを増やすこと
この3つです。
一見するとどれもついついやってしまう事ばかりですが、なぜこの3つを「絶対にやらない」と決めたのか?ひとつずつ解説します。
まずは「安売りをすること」を絶対にやらないと決めました。
名入れペンは筆記具メーカーさんに依存した外注商品です。
自社でペンを製造しているわけでもありませんし、自社で名入れしているわけでもありませんから、当然ながら利益率が高いとは言えません。
そのため一定の利益率を確保するために安売りは絶対しないと決めたのです。
次に「人に依存する営業活動」を絶対にやらないと決めました。
「利益率が高くない商品を販売する際に、多くの営業コストをかけるわけにはいかない」というのが最たる理由ですが、インターネットを介して集客からご注文までを完結する「ネット印刷」の特性上、ネットから集客するノウハウがある程度備わっていたということも理由の一つとしてあります。
さらに名入れペンが必要とされるタイミングはとても読みづらく、人による営業活動が果たして費用対効果が高いのか?という疑問もありましたし、仮に営業部の皆様に協力を仰いだところで、売れるかどうかもわからない名入れペンよりも、本業である印刷物を販売する事に注力するのは明白ですからね。
最後に「取引メーカーを増やすこと」を絶対にやらないと決めました。
名入れペンを販売している競合他社はいろんなメーカーのペンを扱っていましたが、私が名入れペンを商品開発する際にお取引させていただいたメーカーは1社のみ。
なぜ取引メーカーを増やさなかったのか?
主な理由は
- メーカーに多大な信頼を寄せていたこと
- 選択肢を増やす必要性を感じなかったこと
にあります。
まず「メーカーに多大な信頼を寄せていたこと」について。
私は前職でステーショナリーのバイヤーをしていたことがあり、筆記具メーカーに詳しかったため、取引先として選んだメーカーさん1社のみで「事足りる」という確信がありました。
それにいろんな筆記具メーカーさんとお取引するとなると、メーカーさんへの注文が分散して、それぞれのメーカーさんと太いお取引ができないというデメリットも発生しますし、社内のオペレーションもメーカーごとに整備しなければなりません。
さらに言うと、例えば定価100円のペンでノベルティを作って配布したいとお考えの企業様が、「〇〇のメーカーから発売されている〇〇のペンで作りたい」と、ペンの種類を指定することはほぼありませんし、仮にあったとしても取り扱っているメーカーのペンの魅力をしっかり伝えさえすればそのペンでご納得いただけます。
「選択肢を増やす必要性を感じなかったこと」も上記の理由と関係していますが、そもそも選択肢を増やしたからといって売り上げが上がるわけではありません。
扱う商品やサービス内容にもよりけりですが、選択肢を増やすことによって、お客様に迷いを生じさせることさえあります。
名入れペンに関して言うと、
「100円の油性ボールペンを何種類も用意する必要はない」
という判断です。
過去の経験を最大限に活かす
商品企画の進め方、3つ目のステップは「過去の経験を最大限に活かす」です。
商品企画に名入れペンを選んだきっかけは「前職の経験」からです。
先ほども言いましたが、私は前職でバラエティグッズの専門商社においてステーショナリー部門のスタートアップを経験し、仕入れ業務や営業、小売店の陳列や什器開発などを行っていました。
それもあって、自社でノベルティを作ることになった時、真っ先に頭に思い浮かんだのが「名入れペン」というわけです。
最初は自社のノベルティを作るだけの目的でしたが、筆記具メーカーのご担当社様とやりとりをする中で、「御社でも名入れペンを販売してみてはいかがですか?」とオススメいただいたことが商品企画の大きなきっかけとなりました。
ただし、決め手になったのは「私自身が筆記具に詳しかったから」です。
どのメーカーのどんなペンが売れているか?
人気のペンの特徴や他のペンとの違いは何か?
など、筆記具のことは名入れペンを商品企画する前から詳しかったので、新たな市場への参入でしたが、抵抗なく開発を進められたことが後々の良い結果につながった理由のひとつです。
上記はあくまで私の例ですが、会社の事業とは関係なく、商品企画のメンバーが
- 過去の経験を活かせること
- 他の人よりも詳しいこと
- 他の人よりも上手にできること
は必ずあります。
それをうまく商品企画につなげることができれば、自信を持って進められるだけでなく、初動が早くなり、スピード感を持って開発を進めることができるはず。
少なくとも私の場合はそうでした。
業界の常識や当たり前を疑う
商品企画の進め方、4つ目のステップは「業界の常識や当たり前を疑う」です。
名入れペンの業界を見渡してみると、海外の安価な製品を扱うことで価格を抑え、自社で名入れすることによって納期を短縮し、商品ラインナップを増やすことで種類の多さを競い合う傾向がありました。
おそらくそれが業界の常識や当たり前となっているのでしょう。
当然ながらそこから新たなアイデアが生まれることは稀であり、新たなチャレンジを試みる既存の名入れ業社も見当たりませんでした。
私が考案した「台紙付きの名入れペン」が成功した最大の理由は、そんな業界の常識を疑い、それに従うことなくお客様に新たな価値を提案することができたからだと思っています。
というか「同じ土俵で勝負していない」という表現の方が正しいのかもしれません。
「台紙付きの名入れペン」を選ぶお客様は、名入れペンをもっと
「魅力的に見せたい」
「効果的に使いたい」
「付加価値を付けたい」
と考えており、そこに価値を感じていらっしゃいます。
「とにかく安く」「とにかく早く」というお客様は他社を選ぶかもしれませんが、私に言わせると、そもそもそのようなお客様を相手にしていませんでした。
そういう意味においては、同じ業界で商品企画をするのではなく、思い切って異なる業界や市場で新たな商品を開発する方が、良い意味で業界の常識を覆すヒット商品を世に送り出すことができるかもしれませんね。
商品のカテゴリーを意識する
商品企画の進め方、最後のステップは「商品のカテゴリーを意識する」です。
名入れペンとネット印刷との共通点は、紙とペンの違いはあれど、どちらも「印刷をする」こと。
それが商品企画の大きな決め手になったというわけではありませんが、「似て非なるもの」の方が、商品企画した後の販促活動をスムーズに行うことができます。
名入れペンの場合、同じ「印刷」というカテゴリーに入るため、本業であるネット印刷のメニューに加えても大きな違和感はありませんでした。
例えば酒造メーカーである菊正宗さんが作っている「日本酒の化粧水」や、富士フィルムさんが作っている美容液など、全く異なる販路でのプロモーションを新たに展開する必要がある商品は、同じカテゴリーに含まれる商品を販売する時に比べて多くの時間や労力、コストがかかります。(例に挙げた企業様はいずれもネームバリューがあるので、企業名によるメリットの方が大きいかもしれませんが…)
既存のお客様も購入する可能性が高い商品を開発する方が、ゼロから新規のお客様を集めなければならない商品を開発するよりも、費用対効果が高いことは日を見るよりも明らかですから、
「本業で相手にしているお客様にも販売できるかどうか?」
は、商品企画した後の集客や販促を考える上でとても大切です。
とりわけ中小企業や小さな会社においては、集客や販売にかかるコストを最小限に抑えたいですから、初めて商品企画する場合は、商品企画に慣れていない場合は、全く異なるカテゴリーの商品を企画することはオススメできません。
ただし、同カテゴリーの商品企画にこだわりすぎるあまり、せっかくの良いアイデアを見送るともったいないですから、その辺りは全体のバランスや経験、投資する人や予算などを考慮して慎重に検討すべきかと思います。
例えばいくつかの商品を同時に開発するのであれば、そのうちのひとつは商品カテゴリーにこだわることなく果敢にチャレンジしてみたり、ひとつの商品に絞って商品企画するのであれば、まずは同カテゴリーの商品を開発するなど、状況に応じて商品のカテゴリーやジャンルを選ぶと良いでしょう。
商品企画と商品開発の違い
商品企画と商品開発の違いは何か?
商品企画と商品開発は混同されることもありますが、
- 商品企画とは、具体的な商品のイメージを考え出すこと
- 商品開発とは、実際に販売する商品として形にすること
です。
しかしながら、商品企画と商品開発はその立場や役割に違いはあれど、「いい商品をつくる」という目的は同じ。
どんなに斬新な商品を考え出したとしても、それを形にできなければ意味がありません。
どんなに素晴らしい技術を持っていても、それを活かすアイデアが出なければ、宝の持ち腐れとなってしまいます。
そういう意味においては、商品企画と商品開発は一心同体。
もし別々の人間が商品企画と商品開発を担当するのであれば、密なコミュニケーションと強固な信頼関係が不可欠であることは言うまでもありません。
まとめ
今回は商品企画の進め方を、自身の経験をもとに、5つのステップに分けてお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。
忘れないように、もう一度おさらいしておきましょう。
商品企画の進め方 5ステップ
- 自社の強みと弱みを確認する
- やらないことを明確にする
- 過去の経験を最大限に活かす
- 業界の常識や当たり前を疑う
- 商品のカテゴリーを意識する
商品企画を行う際の最適な順番を考えた結果、上記の5ステップとしておりますが、基本的にはどのステップからはじめていただいてもかまいません。
そして、最終的には5つのステップを反復しながら、商品企画のアイデアを煮詰めて、商品の完成度を高めていただきたいと思います。
私はネットショップのAmazonで商品を購入することが多いのですが、知らない名前の会社が実に素晴らしい商品を企画・開発していることに、中小企業や小さな会社の底力を感じます。
お客様にとってほんとうにいい商品やサービスを企画・開発すれば、やり方次第ではベストセラーの仲間入りが可能な時代となりました。
この記事を読んでくださっている方は、少なからず商品企画に関係していると思いますので、ぜひ価値ある商品を企画していただき、多くのお客様にハッピーを届けていただければと願います。
ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました (^.^)
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