中小の卸売業が生き残るためには、どのような戦略を立てるべきか?
卸売業がIT化(デジタル化)を成功させる秘訣は?
そんな疑問をお持ちのあなたに、8年4ヶ月もの間、卸売業界で営業や仕入れを経験し、その後14年以上、ネット印刷でマーケティングや商品開発に携わった筆者が、
- 中小卸売業の生き残り戦略を支える3つの柱
- 卸売業がIT化を成功させるための3つのヒント
をご紹介いたします。
卸売業が年々減少し、全業種の構成比においても縮小傾向が見られる今日、卸売業の不要論や衰退が叫ばれる中、生き残りをかけて新たな戦略を掲げる卸売業者も増えていることと思います。
しかし、勇気を振り絞って最初の一歩目を踏み出そうと思うものの、
「どのような戦略を立てればいいのかわからない…」
「何を柱に戦略を立案するべきか…」
という会社様も少なくありません。
今回お届けする内容は、中小の卸売業が古い殻を抜け出し、業態転換を図る上で最初の一歩目となる「戦略立案」のきっかけとなることはもちろん、生き残り戦略を考える際のヒントが満載です。
ぜひ参考にしていただき、経営改善にお役立ていただければうれしく思います。
それでは早速見ていきましょう。
卸売業の生き残り戦略 3つの柱
卸売業の生き残り戦略とは、一体どのような戦略なのか?
卸売業とひと言で言っても、家具や木材、機会や飲食、繊維や物販商品など、様々な卸売業がありますから、全ての卸売業に共通する戦略はありません。
しかし、すべての卸売業が「生き残り戦略」を考える上で、どうしても外すことができない3つの要素があります。
その要素とは、
- マーケティングの強化
- 競合他社との差別化
- 高付加価値と高利益率
です。
これらの要素を「生き残り戦略」の3つの柱として、それぞれの卸売業者が自社に適した戦略を立てることで、新たな時代の卸売業へと生まれ変わる、最初の一歩目を踏み出していただければと思います。
「今の卸売業に足りないもの」
「未来の卸売業を支えるもの」
その答えは、3つの柱に凝縮されています。
それでは、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
卸売業はマーケティングの強化を
卸売業が生き残るためには「マーケティングの強化」が必須です。
とりわけ情報化社会において、Webマーケティングの強化は欠かせません。
これまでの卸売業は「取引先メーカーから商品を仕入れてお得意先の小売店に卸す」、いわゆるルートセールスを主体としていましたから、基本的には商品を作る必要もなければ、さほど集客を強化する必要もありませんでした。
長年そのような状況が続いた結果、マーケティング、とりわけWebマーケティングは卸売業にとって不要なものとなり、現在は苦手科目のひとつとなっています。
ネットショップの利用が当たり前となり、銀行への入出金、株式の売買、ビジネスにおける商取引や契約など、ありとあらゆるものがインターネットを通じて行われるようになった今日において、卸売業が次のステージに向かうためにはIT化はもちろん、Webマーケティングの強化が欠かせません。
なぜWebマーケティングを強化しなければならないのか?
それは、
- ネットショップを開設して消費者に商品を直接販売するためには、ネットからの集客は必須だから
- 自社開発したオリジナル商品を効果的にプロモーションするためには、専用のECサイトが必要だから
- まだ見ぬ取引先に自社の存在を見つけてもらうためには、ホームページのSEO対策が欠かせないから
- 取引先の小売店に最新情報をリアルタイムで発信するには、SNSや一斉メールの配信が効果的だから
- ブログやランディングページへのアクセスを増やすためには、Webライティングの技術が必要だから
です。
では、今現在Webマーケティング活動を行っていない卸売業者はどうすればいいか?
まずはWebマーケティングの担当者を1名、できるだけ早く配属することをオススメします。
社内で希望者を募り、「やってみたい!」という意欲旺盛な、そして信頼できる社員に、
- ネットショップを開設して商品を販売する
- ブログを立ち上げて、ネットから集客する
- ホームページを作ってSEO対策を強化する
など、明確な目的と課題、必要最低限の予算を与えて、Webマーケティングを専任で、まずは1年間任せてみるのです。
その際、数値目標は必要ありませんが、「目指すべき場所」として、ゴールはしっかりと決めておいた方がいいでしょう。
活動を始めると次から次に課題が出てきますから、必要に応じて書籍を購入したり、セミナーに参加したり、時には外部のコンサルタントやWebデザイナーの力を借りながら、とにかく1年間やってみると必ず成果が表れます。
それを足がかりにWebマーケティングを強化するのです。
一番やってはいけないのは、最初から莫大なコストをかけて外部の業者に委託すること。
これをやって成功している会社をいまだに見たことがありません。
卸売業は他社との差別化を明確に
卸売業こそ他社との差別化を常に考える必要があります。
私も卸売業で働いていましたから、他社との差別化がいかに困難であるか?は骨の髄まで理解しているつもりです。
卸売業はメーカーとは異なり、競合他社も全く同じ商品を扱っていますから、価格で比較されることが多く、印刷業や保険業と同様に、値下げ競争に陥りやすい業種のひとつといえるでしょう。
では、どうすれば値下げすること無く自社から商品を仕入れていただけるのか?
この問題を解消するためには、自社を利用する明確なベネフィットを打ち出す必要があります。
そのためには、お客様の顕在化したニーズだけでなく、潜在的なニーズを探り、「こんなサービスが欲しかった」と思っていただけるような仕組みを構築しなければなりません。
そのヒントは、
- 他社が絶対にやらないこと、絶対にやりたくないこと
- これまで当たり前のように行っていた業務プロセス
- 効果は低いがすぐに実行でき、コストがかからないこと
- 「自社はなんのために存在しているのか」という問い
- 「それはできないことになっている」という思い込み
- リスクは高いが、あらかじめリスクを計算できるもの
に隠されています。
他社との差別化を行う際のポイントは、「トレードオフ」ではなく、「トレードオン」でものごとを考えるということ。
つまり、「あれはできるが、これはできない」ではなく、「あれもできるし、これもできる」という強みを作ることによって、他社との差別化を図るのです。
例えば、今まで10個単位で販売していた商品を、単品で販売するとしましょう。
単品で販売することによって、当然ながら在庫管理やピッキング業務において、今まで以上に細かい作業や注意喚起が必要となります。
配送スピードに影響を及ぼす恐れもあるでしょう。
そこで、通常は「単品販売しますが、配送が1日延期されます」となりがちですが、なんとかして単品販売と配送スピードを両立できる仕組みを作り、「単品販売する上に、配送は今まで通り当日に手配します」とする。
そのためには今行っている業務フローを変更したり、新たなシステムを構築しなければならないかもしれませんが、それをあえてやるのです。
あえてやるからこそ、そこに大きな価値が生まれ、簡単に真似できない仕組みが出来上がります。
卸売業は高付加価値と高利益率を
卸売業が生き残るためには、今後ますます高い付加価値と利益率が求められます。
良い商品が安く手に入れられる世の中になり、モノが溢れている今日において、右から左へ大量に売れる商品が登場することは稀です。
いつの時代も少なからずヒット商品は生まれますが、必ずしもそれらの商品を大量に仕入れることができるわけではありません。
いつ生まれるかわからないヒット商品をあてにすることなく、他では手に入らない高い付加価値を生み出すことができれば、商品やサービスに高い値段をつけることができるようになり、利益率は確実に上がります。
では高い付加価値を生み出し、利益率を上げるためにはどうすればいいか?
答えはいたってシンプル。
先に申し上げた「他社との差別化」を明確にすることで高い付加価値を生み出し、特定のカテゴリーや限られたエリアで1番になるのです。
1番になることが難しければ、80点の要素を3つほど掛け合わせて希少性を高め、どうにかしてベスト3以内に入る。
パレートの法則に当てはめると、特定のカテゴリーにおける市場の利益の80%は、上位20%の商品が生み出しています。
例えば、自社で開発したオリジナル商品が上位20%に入ることができれば、そこそこの販売量となりますから、製造原価や原材料費を抑えるための交渉ができるようになり、商品の開発にかかるコストを抑えることができます。
コストが下がると利益率は上がりますから、売れば売るほど儲かるというわけです。
競合他社が同カテゴリーの商品を値下げしても、自社の商品は他社との明確な差別化ができていますから、追従する必要はありません。
そして、高い付加価値と利益率を備えた商品やサービスがあれば、会社の経営は安定し、いわゆる「看板商品」が存在することで、会社の認知も広がり、営業やマーケティング活動もスムーズに行えます。
卸売業のIT化を成功させるヒント
前項では、卸売業の生き残り戦略の柱として「Webマーケティングの強化」を挙げましたが、中小の卸売業では大半の会社が「IT化が進んでいない」、あるいはIT化を推進しているものの、「IT化のメリットを感じられない」という会社が多いようです。
そんな中、「これからIT化を進めたい」「IT化をはじめたばかり」という会社様に、卸売業がIT化(デジタル化)を成功させるヒントを3つご紹介いたします。
卸売業がIT化を成功させる3つのヒント
- IT化の目的やビジョンを従業員に伝える
- IT化で得られる情報やデータを公開する
- IT化を業績アップや顧客満足につなげる
それではひとつずつ詳しく見ていきましょう。
目的やビジョンを従業員に伝える
古い体質が残っている会社であればあるほど、IT化を嫌う(ご年配の)社員がいらっしゃいます。
IT化を推進して社内の業務効率が上がる…と思いきや、なかなか社内に浸透しない…という会社も多いのではないでしょうか。
そんなことにならないように、IT化を行う前に、IT化の目的を明確に定め、多くの社員から共感が得られるような、将来のあるべき姿(ビジョン)をはっきりと示す必要があります。
全従業員が腹落ちし、気持ちがひとつになったとき、IT化の成功は約束されたも同然です。
得られる情報やデータを公開する
IT化によって得られる商品や顧客に関する情報、売上や販売に関わる情報は、社内の人間が誰でも閲覧できるようにすべきです。
情報をオープンにすることで、いろんな人に気づきを与え、新たなアイデアが生まれる可能性が高まります。
IT化することで会社の現状をガラス張りにして、今会社で何が起こっているのか?これからどうすべきか?どこに問題があるのか?を全社員が肌で感じ、自らの頭で考え、自走する組織へと変化する意味においても、情報の透明性は不可欠です。
業績アップや顧客満足につなげる
IT化を進めるにつれて、様々な情報が整理され、集客や販売に役立つデータを拾うことができるようになります。
それらのデータを見て現状を確認することも大切ですが、そこから仮説を立てることで新たな戦略を考えたり、顧客のニーズを高めるサービスを考えるなど、具体的な行動に移すことがIT化の本来の目的です。
単なる現状分析にとどまることなく、IT化によって明らかになった貴重な情報を活用し、業績アップや顧客満足度アップにつなげましょう。
まとめ
今回は、中小卸売業の生き残り戦略に欠かせない「3つの柱」と、卸売業がIT化を成功させるための「3つのヒント」をお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。
忘れないように、もう一度おさらいしておきましょう。
中小卸売業の生き残り戦略 3つの柱
- 卸売業はマーケティングの強化を
- 卸売業は他社との差別化を明確に
- 卸売業は高付加価値と高利益率を
卸売業がIT化を成功させる3つのヒント
- IT化の目的やビジョンを従業員に伝える
- IT化で得られる情報やデータを公開する
- IT化を業績アップや顧客満足につなげる
卸売業、特に中小の卸売業は製造業をはじめとするその他の業種に比べると、極端にIT化が遅れていて、その理由のひとつに、今日の情報化社会とは対照的な、卸売業ならではの古い体質があります。
インターネットが普及するまで、卸売業は商品の配送の他に「情報の伝達」という重要な役割を担っていました。
メーカーから仕入れた情報を小売店へ、小売店から仕入れた情報を、メーカーや別の小売店へ。
上記の通り、これまでは流通の中間に位置する卸売業者が価値ある情報を持っていましたが、インターネットが普及した現在においては、誰でも簡単に情報を入手することができるようになりました。
つまり、情報の価値が下がるにつれて、卸売業者の価値も下がったというわけです。
インターネットが普及しはじめた時点で、情報の価値が下がることはある程度予測できたことですが、そのことに気づかない、あるいはそれを認めたくない会社は、IT化を積極的に進めることなく今に至っています。
しかし、今からでも遅くはありません。
もしIT化がまったく進んでいなくても、この記事でお伝えした「卸売業の生き残り戦略 3つの柱」「卸売業のIT化を成功させるコツ」をヒントに、IT化を進めることができれば、新たな成長カーブを描ける可能性は十分にあります。
少なくとも私はそう信じていますし、心から応援しています。
最後にもうひとつ。
「日々の業務に追われて、重要な仕事に費やす時間が足りない…」
「経営戦略や人事、新事業について専門分野の人に相談したい…」
という経営者・役員・マネージャーの皆様に画期的なサービスを2つご紹介いたします。
そのサービスとは、
- オンラインアシスタント
- スポットコンサルティング
です。
オンラインアシスタントとは、経理や総務、人事や労務、財務や法務、営業やマーケティングといった様々な分野の専門的な知識やスキル、実務経験を持った外部(社外)の人材が、オンライン上で自社の業務をサポートしてくれる便利なサービスです。
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ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただき、ほんとうにありがとうございました (^.^)