卸売業がなくなる日は近い?
卸売業がなくなると、市場にどのような影響を及ぼすのか?
卸売業が業態転換するためにはどうすればいいか?
そんな不安や悩み、疑問をお持ちの方に、8年4ヶ月もの間、卸売業界で勤務していた筆者が、
- もし卸売業がなくなれば、メーカーや小売店はどうなるのか?を解説
- 卸売業が業態転換するきっかけとなる「7つのヒント」をご紹介
いたします。
なお本記事は、決して卸売業の将来を不安視するものではありません。
むしろ、卸売業の明るい未来を願い、卸売業が発展・繁栄するためのお役に立ちたいと思いながら、卸売業に身を置いていた経験や、その後のビジネス経験から得た知識や知恵などを総動員しながら書いています。
卸売業で働いている方をはじめ、卸売業とお取引している方、卸売業にご興味がある方にお届けできれば幸いです。
それでは早速みていきましょう。
卸売業はなくなるのか
卸売業はなくなるのか?
卸売業は平成の30年間で構成比が大幅に縮小。
販売額やの事業所数も減少しており、現状は衰退していると言わざるを得ません。
これらの状況から、
「卸売業はこのままなくなるのか?」
と危惧されている方も少なからずいらっしゃいます。
個人的には「卸売業がなくなることはない!」という見解ですが、
- もしも日本から卸売業がなくなるようなことがあればどうなるのか?
- メーカーや小売業者にどのような影響を与えるのか?
を、卸売業が果たしてきた機能や役割から推測し、起こり得る事態を考えてみたいと思います。
メーカーに与える影響
卸売業がなくなると、メーカー(生産者)にどのような影響を与えるのか?
- 小売業者への配送業務が増えることによって、時間と労力、流通コストが大幅に上昇する
- 卸売業者へのまとまった注文が減少することで、販売予測(生産量)が難しくなる
- 取引先が一気に増えるため、小売店へのきめ細やかなフォローができない恐れがある
- 数多くの小売業者から商品の代金を回収する必要があり、代金未回収のリスクが高まる
小売業者に与える影響
卸売業がなくなると、小売業者(小売店)にどのような影響を与えるのか?
- メーカーごとに商品を発注しなければならないため、多くの時間と労力を費やすことに
- 商品の発注単位が増えることによって、今まで以上に在庫を保管する場所が必要になる
- 商品の発注単位が増えることによって在庫過多となり、在庫管理が難しくなる
- 小さなお店は商品の発注量が少ないため、メーカーと直接お取引できない可能性がある
卸売業はなくならない
上記の「メーカーや小売業者に与える影響」をご覧の通り、商品が流通する市場全体を考えた場合、卸売業者がなくなると物流コストが増大します。
人件費をはじめ、梱包に必要な資材費や商品を配送する運賃を考えると、卸売業者が市場全体の物流コストを抑える重要な役割を担っていることを忘れてはなりません。
加えて、卸売業者は市場の在庫を集中して持つことによって、市場全体の在庫リスクを軽減するはたらきがあります。
メーカーは商品をまとまった量で販売できる他、販売予測を立てやすくなり、未回収のリスクを抑えることができ、小売業者は多くの在庫を抱えることなく、必要な商品を、必要な時に、必要な分だけ卸売業者から仕入れることができる。
それもこれも卸売業者の存在があってのこと。
上記のことから、「卸売業はなくならない」というのが私の結論です。
万が一、卸売業者がなくなることがあっても、「卸売業の機能」がなくなることは決してないでしょう。
卸売業は業態転換が急務
「卸売業がなくなることはない」と結論付けましたが、卸売業が衰退している現状を考えると、これまでと同じことをやっていたのでは、ますます衰退の一途を辿ることは想像に難くありません。
卸売業がこの先発展するためには、業態転換することが急務です。
とりわけ、中小の卸売業が業績を維持、あるいは伸ばすためには、新時代に適応した新たな卸売業へと進化する必要があります。
では、
どのような卸売業へと進化すればいいのか?
どのような業態へと転換すべきか?
こればかりは取り扱っている商材や自社の強みによっても異なるでしょうから、ここでは業態転換のきっかけとなるヒントを、「卸売業の業態転換を促す7つのヒント」と題して以下にご紹介いたします。
卸売業の業態転換を促す7つのヒント
- サービスを分ける
- ノウハウを活かす
- 新商品を開発する
- 消費者に販売する
- 販売網を活用する
- 異業種に販売する
- 付加価値をつける
すでに実践している卸売業者もあるかと思いますが、そうでない会社は業態転換や経営改善のヒントにしていただければ幸いです。
それではひとつずつ簡単にご説明いたします。
サービスを分ける
以前から行っているサービスを分解して、それぞれのサービスを独立させる方法です。
例えば、倉庫での在庫管理や商品のピッキングから発送までをパッケージにして、倉庫業のビジネスをスタートさせる。
海外からの仕入れに慣れているのであれば、海外商品の輸入代行を行うなど、慣れ親しんだサービスを深めることで新たな事業やビジネスを展開します。
ノウハウを活かす
卸売業で培ってきたノウハウを活かしたビジネスを展開します。
あるいは、ノウハウ自体を販売します。
独自に開発した在庫管理システムをはじめ、営業や販売に関わるノウハウ、商品の仕入れに関する仕組み、商品を陳列する什器や備品など、他社と差別化できる要素があって、一定の効果を上げているものであれば、それらを商品開発することができるかもしれません。
新商品を開発する
すでにチャレンジしている卸売業も多いかと思いますが、取引先のメーカーの協力を得て、オリジナル商品の開発にチャレンジします。
メーカーから仕入れた商品とは異なり、自社で開発したオリジナル商品は独占的に販売できますから、競合他社との差別化はもとより、高い利益率を確保できるという大きなメリットが魅力です。
ただし、生産する際のロットが大きく、完売するまでに時間を要しますから、ある程度の販売力がなければ難しいかもしれません。
消費者に販売する
これまでは実店舗を構えなければ消費者に販売できませんでしたが、インターネットが普及している現在は、誰でも簡単にネットショップを開設することができます。
ネットショップを開店すること自体はさほど難しくありませんが、問題はサイトへの「集客」です。
ネットショップを開くにあたって、参入障壁が大幅に下がったということは、裏を返すと、それだけ競合他社が一気に増えたということ。
ネットショップを成功に導くためには、Webマーケティングの力が必要となるでしょう。
販売網を活用する
いつも商品を卸して(販売して)いる取引先の小売業者の販売網をフル活用します。
これまで小売業者が扱っていなかったジャンルの商品を提案する、あるいは、お店で働いている従業員の皆様を対象とした商品を販売するのです。
と言っても、最初はなかなか商品を置いていただけなかったり、従業員の方に買ってもらえませんから、まずは販売代行からスタートすることをオススメいたします。
試しにいくつかの商品にチャレンジして、見込みがある商品だけを本格的に仕入れて販売すると良いでしょう。
異業種に販売する
すでに扱っている商品を、普段からお取引がある小売業者に販売するのではなく、これまで販売したことがないお店や会社に販売します。
なぜドラッグストアが、食料品や飲料水を販売しているのか?
なぜアパレルショップが、シューズやバッグ、雑貨や文具を扱うようになったのか?
なぜファミリーレストランのレジ横に、安価なおもちゃやガムが売られているのか?
人間の行動パターンや行動心理などを深く考えると、まだ誰も気がついていない販路が開けるかもしれません。
付加価値をつける
先にご紹介した6つのヒントとは少しニュアンスが異なります。
付加価値をつけるとは、すでに行っているサービスに対して、こちらが負担にならない程度に「お客様が喜ぶ何か」を追加するというものです。
「なんだそんなことか…」と思われるかもしれませんが、毎日同じ業務を淡々とこなしていると、そうすることが当たり前となって「改善」が生まれません。
「お客様にもっと喜んでいただくためにはどうすればいいか?」
新しいことにチャレンジする前に、あらためて今の業務を見直してみることも大切です。
まとめ
今回は「卸売業はなくなるのか?」をテーマに、
- 卸売業がなくなるとメーカーや小売店にどのような影響を与えるのか?
- 中小の卸売業に求められている業態転換のきっかけとなる7つのヒント
をお伝えしてまいりました。
忘れないように、
もう一度「卸売業の業態転換を促す7つのヒント」を、もう一度おさらいしておきましょう。
卸売業の業態転換を促す7つのヒント
- 今行っているサービスを細かく分解し、独立させる
- これまで培ってきたノウハウを、効果的に活用する
- メーカーの協力を得て、オリジナル商品を開発する
- ネットショップを開設して、直接消費者に販売する
- 今まで築き上げた販売網で、新たな商材を販売する
- 既に取り扱っている商品を異業種に提案、販売する
- 既存のサービスを改善し、新たな付加価値をつける
私の知っている卸売業者に、業態転換を見事に成功させている会社があります。
その会社は卸売業者の衰退が始まる前から利益率の低さを問題視し、取引先のメーカーとタイアップして商品を独占販売したり、OEMでオリジナル商品を生産するなど、新たなチャレンジを繰り返してきました。
思うようにいかないことも多々あったかと思いますが、何度もチャレンジすることで成功する確率を高め、一歩ずつ前進しながら着実に業績を伸ばし、今に至っています。
そのような会社を見ていると、卸売業の新たな可能性を感じるとともに、成熟した業界が生まれ変わる前兆のように思えてなりません。
最後にもうひとつ。
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ということで、今回はこの辺で。
最後までお読みいただき、ほんとうにありがとうございました (^.^)